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とある科学の反逆者達 第一部 序章① 反逆者が生まれた日「だからお前は笑っていいんだよ。 妹達は絶対に、お前がたった一人で塞ぎ込む事なんか期待してないから。 お前が守りたかった妹達ってのは、自分の傷の痛みを他人に押し付けて満足するような、そんなちっぽけな連中じゃねーんだろ?」 この言葉によって美琴の悪夢のような幻想は真の意味で壊され、そして上条に対する新しい幻想が生まれる。 少し考えればその幻想を生み出した感情の正体はすぐに分かった。 ただ美琴はその感情を受け入れていいかどうか分からない。 例え上条や妹達が自分のことを許してくれたとしても、自分に人並みの幸せを送る権利があるのだろうか? それに死んでいった妹達の本当の気持など誰にも分かるはずがない。 きっと自分はこの罪を一生背負っていかなければならないのだろう。 だから美琴は敢えて上条の言葉を突き返すように言った。「いい加減なことを言わないでよ。 例えアンタや妹達が許してくれたとしても、私の罪が消えるわけじゃない それに死んでいった一万三十一人の妹達の本当の気持ちなんて誰にも分からない。 私は一生この罪を背負って生きていく。 アンタには感謝してもしきれないけど、あまり適当なことを言うと承知しないわよ!!」 病室の中には耳が痛くなるほどの沈黙が流れる。 上条の顔を見るとその顔はどこか苦痛に歪んでおり、気まずそうな表情をしていた。 そのことに少し罪悪感を感じながらも、これで良かったと美琴は病室の出口へと向かう。 美琴はこれから学園都市を敵に回した、学園都市そのものを崩壊させるための戦いに赴こうとしていた。 絶対能力進化における学園都市の非人道的な実験を学園都市の内部だけでなく、外部にも漏らそうとしているのだ。 そうすれば世界から学園都市への非難は免れず、下手をすれば学園都市そのものが瓦解しかねない。 それは世界に大きな混乱を生むことになるだろう。 しかし例え世界を敵に回そうとも、美琴は学園都市で二度と非人道的な実験が行われないよう戦い続けるつもりだった。 そして学園都市の上層部の人間はどんな手段を以ってしても、学園都市の危険分子になる自分を消しに掛かるに違いない。 上条がそのことを知ればきっと協力を申し出てくれる。 それは自惚れではなく、上条の性格を考慮した上での結論だ。 これ以上、無関係な上条を巻き込むわけにはいかない。 自分と妹達を救ってくれた上条の恩に報いるためにも、絶対に勝たなければならない戦いだった。 しかし美琴が病室のドアの取っ手に手を掛けたその時……。 「……お前、学園都市に喧嘩を売るつもりだろ?」「え?」 上条から出た言葉に美琴は思わず振り向く。 そこには真剣な表情で自分の顔を見据える上条の眼差しがあった。 美琴は上条の言葉に理解が追いつかない。 何故自分の考えが読まれてしまったのだろうか? しかしここで上条の言葉に甘える訳にはいかなかった。 美琴は努めて平静を装って、茶化すようにして言った。「……アンタ、一体何を言ってるの? 学園都市の第三位で誰よりも学園都市の恩恵を預かってる美琴センセーが何で学園都市に喧嘩売らなきゃいけないのよ?」 しかし上条の関心を逸らすべく冗談めいて言ったにも拘らず、上条の表情は真剣そのものだった。 その表情はまるで全てを見透かしているようで、美琴はそれ以上言葉を続けることができない。 そして言葉に詰まった美琴に対して、上条は少し表情を崩すと微笑みながら言った。「……馬鹿な俺でも分かるんだ、お前が気付いてないはずないだろう? 例え実験を止めて形だけ妹達を救っても根本的な解決にならない。 俺も学園都市の裏の事情に詳しいわけじゃないけど、今回の件で学園都市に巣食ってる闇の一端は理解したつもりだ」「……」「ここまで来たんだ、最後まで付き合わせろよな。 まあ上条さんは無能力者なんで出来ることは限られてるかもしれないが、お前が辛い時に支えてやることくらいはできるはずだ」 そんなことはないと美琴は心の中で思う。 自分があの鉄橋の上で絶望に沈んでいる時、上条が現れてくれたことにどれだけ救いを感じたか……。 そして妹達のためにボロボロになりながら戦ってくれた上条が頼りにならない筈がなかった。 しかし上条がどうして良好な関係とはいえなかった自分のためにそこまで言ってくれるか分からない。「……どうして、どうしてアンタはそこまで!?」 美琴は錯乱した様子で叫ぶようにして尋ねる。 すると上条は悲痛な面持ちをする美琴に対して優しく言った。「鉄橋でお前と対峙した時、俺はお前の強さを知った。 自分の命を賭して妹達を救おうとしているお前の姿を見て、誰かのために戦う本当の意味を初めて知ったんだ」「アンタだって、いつも誰かのために動いてるじゃない? 今回の件もそうだし、虚空爆破事件の時だって自分の危険を顧みずに……」 すると上条は少し訝しげな表情を浮かべる。 美琴は知らないが、上条はとある一件でエピソード記憶……即ち思い出を全て失っている。 恐らく美琴が言っているのは記憶を失う前の自分のことだろう。 そのことに過去の自分に対する劣等感のようなものを覚えるが、今はそれを気にしている場合ではない。 美琴は再び一人で闇の中に足を踏み入れようとしている。 そんな美琴を一人にする訳にはいかなかった。 「……昔のことは後で話すとして、とにかく俺はお前に誰かを救うために戦う決意を教わったんだ。 それと同時にお前のことを理屈抜きに守ってあげたいと思った。 だからお前が一生罪を背負って生きていくっていうなら、俺にも一緒に背負わせてくれないか?」 上条の言葉に美琴は頬が火照るのを感じた。 上条が完全な善意から言ってくれていることは分かっている。 しかし一生罪を背負って生きていくと宣言した美琴にとって、どうしても上条の言葉は違う意味を意識させるものだった。「一緒に背負わせてくれないかって、人が聞いたら勘違いするようなこと言ってるんじゃないわよ!!」「へ?」 上条はやはり意識して言った訳ではないようだ。 そしてそのことが却って美琴を落ち着かせる。 正直に言えば、自分達を絶望の淵から救いだしてくれたヒーローである上条に今度も救いの手を差し伸べて欲しい。 しかしそれ以上に上条を巻き込みたくないという気持ちが強かった。「……アンタの言葉、外から聞いたらプロポーズにしか聞こえないわよ」 美琴の言葉に上条は顔を赤くする。 美琴は敢えて重いことを言うことで、上条の決意を鈍らせるつもりだった。 こうやって追いつめるような形で恩人の優しさを袖にするのは心苦しいが、それでも上条を巻き込みたくない。 上条にこう言ってもらえただけで、既に十分救われているのだから……。 しかし上条から返ってきた言葉は美琴の幻想を殺すのではなく、一転させてしまうものだった。「軽々しくプロポーズみたいな言葉を口にしたことは謝る。 でも好きな女の子のためなら、その覚悟はある!!」 「え!?」 上条の言葉に美琴は再び混乱に陥る。 まさかそんな答えが返ってくるとは思っていなかった。 それに上条に好かれるようなことをした覚えが全くない。 美琴の中で今さっき生まれたばかりの感情が激しく脈打ち、溢れ出してきた。 「で、でも私、アンタに好かれるようなこと何もしてないし……」「まあ確かに二千円札を呑み込まれたのを笑われたり電撃ぶつけられたり、色々あったもんな」「うっ……」 上条の辛辣な言葉が胸に刺さる。 確かに今まで上条と顔を合わせた時は、一方的に因縁をつけ勝負を挑んでばかりいた。 冷静に考えると、これでは子供扱いされたりビリビリ呼ばわりされるのも仕方ないかもしれない。 しかし上条自身はそんなこと気にしていないと言わんばかりの笑顔で言った。「でも自分を犠牲にしてまで妹達を守ろうとしたお前のことを、俺は他の誰でもない自分の手で守ってあげたいと思ったんだ。 それにお前、誰か傍にいないと無茶ばっかりしそうだし……」「アンタに言われたくないわよ!!」「とにかく俺はお前と一緒に歩いていきたい、お前のことを支えてあげたい。 それだけじゃ駄目か?」「本当に私なんかが傍にいていいの?」「当たり前だ」 上条の力強い言葉に美琴は思わず涙ぐんでいた。 そして上条に駆け寄ると、上条の胸に顔を埋めて堰を切ったように涙を流し続ける。 本当は死ぬのが怖かった、しかし過去の自分の罪を清算するにはそうするしかなかった。 そして上条に救われたものの、まだ日常に帰るわけにはいかない。 もう二度とあのような悲劇を生まないためにも、学園都市の闇と戦う覚悟を決めた。 それは孤独な戦いの筈だった。 しかし上条はそんな自分の気持ちを見透かしたように傍にいてくれると言ってくれた。 この先の戦いに本当に上条を巻き込んでいいかは分からない。 それでも上条と一緒なら学園都市の闇を払える、そんな確信があった。「お前はもう一人じゃない。 俺とお前は同じ道を歩んでる、そのことを忘れるな」 上条は美琴のことを抱きしめながら力強く言った。 美琴はレベル5といっても、その本質はまだ十四歳の女子中学生に過ぎない。 自分より年下の美琴がどれだけの覚悟を持って、学園都市という強大な力に立ち向かうことを決めたのか……。 まだ殆ど空っぽな自分には窺い知れない。 しかし例え自分の力が微力なものでも、心から腕の中にいる華奢な少女を守ると上条は強く誓う。 それが美琴自身から教わった大切なものを守るための覚悟だった。 こうして学園都市に対する二人の反逆者が生まれた。 しかし上条も美琴も知らなかった。 特殊な力を持つ無能力者と学園都市第三位の反逆ですらも学園都市統括理事長のプランに含まれていることを……。
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友達ルート? 2 夕方 下校中 とある自販機前上条「ふーんふんふん、ふーんふんふん、ふんふんふーん♪(………ん?お、いたいた)」上条「おっすー、御………っ!!!!」キノカゲニカクレル上条(な、なんだ?あの中学……いや高校生か?御坂と何話してんだ?)ホントウニアリガトウゴザイマス ガヤガヤイ、イヤトウゼンノコトヲシタダケデスヨ ガヤガヤ上条(……見た感じでは、あれか。あの男が不良に絡まれてるところを御坂が助けた、もしくはほとんどないと思うが御坂が 助けられた。で、そのお礼を言ってるっていういつも見るパターン……ってところか? でも……何だろう?あの男は他の奴と違うな……なんとなく…海原と似た感じがする。いやストーカーという意味ではなくてだな。 その、いい奴っぽくて何でも出来そうでイケメンっていう若干ムカつく感じのオ―ラがするぞ……ちくしょう)男子学生「そ、それでですね。ひとつお話ししたいことがあるんですが聞いてくれますか?」美琴「はい、いいですよ?(顔赤くしてどうしたんだろう?相談事?ちょっと聞くのは恥ずかしいとかかな。 例えば……恋愛相談みたいな、なんてね。自分のも上手くいってないのに出来るわけないわよね……)」男子学生「そ、そうですか。それじゃあ……」ガシッ美琴「ふぇ?」上条(ちょっ!おい!!なんで御坂の手を握ってるん)男子学生「は、初めて見た時から好きでした!一目惚れです!突然ですみませんが……その、つ、付き合ってくれませんか!?」美琴「………へ?………っ!!えとあのその……」アワアワ上条(……マ、マジ、かよ。こんなストレートに告白する奴がいるなんて…………すげえ、というか正直羨ましい? 俺なんか怖くて……じゃなくて!!!み、御坂は!?どうすんだ?ま、まさか……)美琴「えっと、あの………き、気持ちは嬉しいです」上条(え、あ………それじゃあやっぱり受け……) 美琴「でもその………ごめんなさい!」アタマサゲル男子学生「……っ」テヲハナス上条(………よ、よかっ)美琴「私、その、好きな人がいるんです!だから……ごめんなさい!」男子学生「あ、謝らないでください………そう、でしたか。好きな人、ですか。ふむ」美琴「あ、えっと、その………」男子学生「ハハ……よっぽどその人が好きみたいですね。………今僕が言ったことは忘れてくれて構いません。 自分の気持ちを聞いてくれて本当にありがとうございました。それから僕……応援してます、あなたの恋を。 好きになった人には幸せになって欲しいですからね。どうか頑張ってください!」美琴「あ……は、はい(応援だなんて……勢いで言っちゃったけど今もうアイツには………)」男子学生「それでは」タタタタ上条(御坂には好きな人が……いるのか…………) 上条の住んでる寮上条「はあはあ………走って何も考えないようにしてたけど、無駄だったかな」上条(御坂には好きな人がいる、か………何も考えたくないな……そうだ。確か土御門から酒預かってたな。 義妹に見つからないように預かっておいてほしいぜよ、とか言ってたっけ。場所代に少しくらいなら飲んでもいいとか 言ってたな…………今日は飲もう。飲んで酔って今日起こったことはすべて忘れよう。うん……)数分後上条「そうだよ、御坂がいつもそばにいるからってずっといるわけねぇじゃねえか。どんだけ浮かれてんだよ俺は。 そんなわけあるかっつーの!………はぁ、不幸なくせに何で恋なんかしちゃったんだろうな。こんなに辛いんだったら 知らないままでよかったと上条さんは思うんですのことよっと」ゴクゴク数時間後上条「今の状況をあのカエル先生に診せたらどうなるんかねぇ?」ヒックとある病院(という設定) 上条(カエル先生)「あの子がとある男性と幸せそうにしているが……これでいいのかね?本当は泣きたいんじゃないのかい?」上条「何言ってるんですか。もう泣いてますよ。これ以上ないくらいにね」上条(カエル先生)「どこがかね?別にどこも泣いてるようには見えないんだが……」上条「そんなの決まってるじゃないですか」上条「心が、ですよ」キリッ上条「……ってかぁ?あひゃははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!」ヒック上条「…………………………外で風に当たってこよー」ヨイショット とある橋にて美琴(しまったしまった。あの後今週号の『密室×密室探偵』の続きを見てない事に気付いていつもの近くのコンビニに行ったら その雑誌が無くて仕方ないから他のコンビニとか書店とか色々探し回ってやっと見つけて読み終えたら もうこんな時間だなんて………不幸だわ。………そして何故か説明口調?)美琴(それにしてもまさか告白されるなんてね。勢いで好きな人がいるんですとか言っちゃったけど………そういえば アイツの好きな人って誰かしら?巨乳女の中の誰か?………いや、やっぱり、インデックス、よね。一応アイツと 一緒に空港で見送ったけどあの時のアイツは笑顔でいようとしてたけど寂しそうだったし。いなくなって初めて 好きだったことに気付いた、とかあるのかも。でももうイギリスに帰っちゃったし……それにインデックスはシスターだから そういうのまずい筈だし………でもあの子だってアイツの事好きな筈だし………こういうのを報われない恋っていうのかな。 はぁ、こんなの私が入り込む余地なんか……無い…………ん?あそこにいるツンツン頭は……)酔条さん「あれ~?そこにいるのは我が愛しのみこっちゃんじゃな~い?」美琴「わ、我が愛しのってななななに言ってんのよアンタは!!??ってまた酔ってるし!」酔条さん「上条さんがいつどこで酔おうが別にどうでもいいでしょ~?」ヒック美琴「……はいはい、それでアンタはまたなんで酔ってんのよ?」ハァ酔条さん「それはみこっちゃんにー」美琴「はいそうそうその調子で美琴さんに言ってみなさい?(っていうか酔っ払いの扱い方全然成長してない……)」酔条さん「好きな人がいるって言うからーみこっちゃん大好きな上条さんとしてはとってもとっても悲しいんだなぁ~」ヒック美琴「ゲホゲホゲホゲホッッ!!!!!はい?私に好きな人?ていうか私を大好きって?え?」酔条さん「だから~とりあえず全部忘れようということで飲んだ次第でありまーす、みこっちゃん!」ケイレイッ ビシッ!美琴「な、な、なっ!?(お、落ち着くのよ御坂美琴。ここでコイツの言葉をそのまま受け取ってはダメ!なぜならコイツは 今酔っているから!そう、まずは大事そうなトコだけ拾っていこう。まず最初に『我が愛しの』で順番に『好きな人がいる』 『大好きな上条さんとしてはとってもとっても悲しい』。これらから導き出される真実は………)」美琴(『我が愛しの人にはすでに他に好きな人がいるから俺は諦めるしかない。その人が大好きな上条さんとしては とってもとっても悲しいんだぜ』……とこう、なる?…………インデックスじゃないのかな? はっ!ま、まさかあの母性の塊のような巨乳女とか!?…………ま、まぁとりあえず酔ってるみたいだからコイツの寮に 送っていこうかしら。うん、そうしよう!)コノカンワズカ1ビョウ美琴「よし。状況は分かったわ。そして酔ってるアンタは危なっかしいから私がアンタの寮まで送ってってあげるわ。 ほら美琴さんに肩貸してみなさい」カミジョウノトナリニイク酔条さん「やだもん」ヒョイ美琴「なっ!?(……ちょっと可愛いかも)」酔条さん「上条さんは一人でも家に帰れるよ~だ。そんじゃまたねーみこっちゃん。わんわん!」ダダダダダダダダダダダ美琴「は、速い……もう見えなくなっちゃった。アイツって酔ってた方が実はすごいんじゃないかしら……… まぁどうでも良……くないわね。そっか、アイツ失恋しちゃったんだよね。明日会った時はあまり触れない方がいいかな……」 翌日の朝 上条寮上条「お、おおおおおおおおおお俺は御坂になんてことを言っちまったんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」上条「え?え?え?確か御坂大好きとか我が愛しの~とか言った気がするぞ!?ってか何で覚えてんだよ!!!???」上条「…………うわぁ、こんなことなら忘れた方がまだ良かったのに……今日どんな顔で御坂に会えばいいんだよぉ……」夕方 下校中 とある自販機前上条(さて、行きはいつもと違う道にしたから御坂に会わなかった。そして帰りは世話好きなあいつのことだからきっと 探してくれてるんじゃないかと思う……昨夜の件もあるしな。だから俺はあえていつもの道で帰る!そうすれば 御坂とは会わないはず。ふふふ、完璧だ。今日の俺は冴えてるぜ!)美琴「やっと見つけたわよアンタ!!(やっぱりこっちだったわね。私のカンをなめないでよ!)」ビシィ上条「……お、おっす御坂?(何……だと?御坂には常識が通用しないというのか!?)」美琴「何で疑問系なのよまったくアンタは………朝は会いたくなくて違う道通ったでしょ?」上条「うっ!いや、だって、ほらその昨夜の事とか、さぁ……」美琴「あぁ、あれでしょ?(恋してた人にはもう好きな人がいたって話ね。一応仮定だけど)」上条「そ、そうだよ(御坂に好き好き大好きって言った事だよ。何も思わない訳ないよなぁ普通…ハァ)」美琴「まぁアンタはその時思いっきり酔っぱらってたからね。頭の中が相当混乱してたから変なことも口走っちゃったんでしょ? だからさ、お互いに昨夜の事は無かったことにして忘れましょ?それに私、アンタの言ったこと別に何とも思ってないしさ。 (でもやっぱり私は忘れられないかも。正直それが分かった瞬間かなり嬉しく思ってる自分がいた。アイツは悲しいってのに。 ………私ってこんなに嫌な女だったのね。本当に最悪…………ええい!もうそういう事考えるのやめい!昨日の夜散々それで 自己嫌悪してたでしょうが!)」上条「あ、あぁ(俺があんなこと言ったのに別に何とも思ってない、それってつまり俺の事は友達だからそんな風には思えないって ことだしさらにそれすら無かったことにするっていうのか……確かにそりゃそうだろうけど、さ……)」美琴「ほら、さっさといくわよ?特売あるなら付き合ってあげるわよ?」クルッ スタスタスタ上条(待ってくれ……行かないでくれよ、御坂!!)ガバッ ウシロカラダキツク! 美琴「………………………へ?ちょ、ちょっと…………アアアアンタなななにを?え?」アワアワ上条「え~とですねー(どどどどうしようここからどうすればいいんでせう?……そ、そうだ!こういう時はアレだ)」ハナレル上条「すいませんでしたーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」カミジョウハドゲザヲクリダシタ!美琴「……………え?」上条「突然抱きついてすいませんでしたーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」ドゲザチュウ美琴「………………ふ、ふ~ん?アンタって失恋したらすぐ次の女にこういう事するワケなんだ?」ナゼカムカツク上条「え?失恋とは?」美琴「なに?この期に及んで誤魔化そうってワケ?」ゴゴゴゴゴ!上条「い、いやマジで何のことでせう?」ビクッ!美琴「とぼけるんじゃないわよ!!アンタにはその…す、好きな人がいて、でもその人にはもう好きな人がいるから 諦めるしかなかった。だからそれを忘れようとする為に昨日酒飲んでたんでしょうが!!!!!(つ、ついに言った! 言っちゃった!!っていうか若干支離滅裂になってる気が……)」上条「え~と?待て、整理させてくれ。……………いやまず好きな人ってお前なんだけど?」美琴「……………………………………え?」上条「……………………………………………………あ。(何言っちゃってんだおいいいいいいいいいいいいい!!!!!!????? え?え?何これどうなっちゃうの?どうなっちゃうの!?)」 美琴「(好きな人が私?ってことは昨夜言ってたことは全部私に向かって言ってたことでていうか今アイツが 私のこと好きって言ったってことはつまりこ、告白された?)ふ………ふ………………」上条「ふ?(不幸だわ?不愉快よ?つまりお断りってことか?やっぱりそうな……ん?いやこの感じは…)」ダッ! カケヨル美琴「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」ビリビリビリ!上条「はい幻想殺し幻想殺し」パキーン! 上条(で、御坂を膝枕しているわけだが………寝顔可愛いなぁ……)ジー美琴「んぅ………」パチ メヒラク上条(起きちゃったか、残念)美琴「ん~?あれ~?当麻だ~。えへへへ」カオニテペタペタ上条「あ、あの~御坂さん?何してるんでせう?」美琴「ふぇ?………あれ?この感触………げ、現実!?」ガバッ上条「うお!?」オデコゴッチン!上条美琴「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」オデコオサエル上条「お前……いきなり起き上がらないでくれよ……」美琴「ア、アンタこそ顔近いのよ!」上条「うっ、まあ確かにそう、だな………ごめん」美琴「あ、えとその、い、言い過ぎたわ。ごめんね?」オキアガル上条「…………えっと、一つ聞いていいか?」美琴「な、なに?」上条「その……お前昨日ここでこ、告白されてたよな?」美琴「…………まさか見てたっていうの?」上条「ああ偶然な。それで御坂は断ってたみたいだったけど……何でなんだ?男の方はなんていうかこう性格とか外見とかどこにも 非の打ち所の無いようなすげえヤツっぽくててっきりOKするんじゃないかと思ってたんだが………そういえばあの時お前 なんとかがいるとか言ってた気がするな。何がいるんだ?(すごく無理矢理に聞いてるのは自分でも分かってる。でもきっと ここで聞いておかないと先に進めない……これで自分にけじめつけないとな)」美琴「そんなの大好きなアンタがいるからに決まってるじゃない」上条「………………………………………………はい?」ポカン 美琴「?………っ!!!!!ちょっ!い、今の!無し!!無しよ!!!……その…無し……なん、だから………………」モジモジ上条「………………………本当に無し、なのか?」ショボン美琴「え、あ、いや……なし、じゃ、ない……かも……しれなくも、なくも、なくもなくもなくも………」上条「えっと……どっちだ?」美琴「だ、だから!その………す、好きなのは、アンタ……」ボソボソ上条「……あ、はは」美琴「な、何で笑うのよ!?」ナミダメ上条「ごめんごめん…………そっか……そうだったのか……はは」美琴「も、もうっ!何なのよ!?」上条「えっと……いつからなんでせう?」美琴「はい?」上条「だからその……俺が好きっていうのは」美琴「そ、それは……あれ?いつからだろ?えーと……いつの間にかそうなってたって感じ、かなぁ…って なに言わせてんのよアンタは!!」上条「そ、そっか。ていうかお前よくそんな恥ずかしい台詞言えるな?」美琴「私だって恥ずかしいわよ!」上条「じゃあえっとその……つ、付き合おう…か?」ホオポリポリ美琴「あ…………うん。ここここれからもよ、よろしく………………………ちょ、ちょっと喉渇いたから飲み物買ってくるわ! うん、喉渇いちゃったから仕方ないわよね!それじゃ」上条「御坂!!」ダキツク!美琴「ふにゃ!?ア、アンタにゃにゃにゃにゃにしてるにょよ!!??」アワワワワ上条「ずっと……ずっとこうやって抱きしめたかったんだ。その……嫌なら離すけど」美琴「全然嫌じゃない!!む、むしろう、嬉しいっていうかその………」上条「そっか……俺も嬉しいよ、御坂」 美琴「…………………あのね?」上条「ん?」美琴「………好きだよ、当麻」上条「ど、どうしたんだ急に?」美琴「だって……ちゃんと言ってなかったかなぁって思ったから」上条「……そう、だったな。俺も好……大好きだよ、美琴」ニコッ美琴「っ!わ、私だって当麻のこと大大大好きだもん!!」上条「おやおや?美琴さんたらまたそんな恥ずかしいことを言っちゃうなんて~」ニヤニヤ美琴「っ~~~~~~!!!!!!!!!」上条「あれ~美琴せんせー?顔が真っ赤でございますのことよ?どうしたのかな~?」ニヤニヤ美琴「……………………………と~う~ま~?」ニタァァァ上条「あ、あれ?美琴さーん?か、上条さんはどす黒い笑顔はみみ見たくないかな~?」ブルブル アセダラダラ美琴「覚悟は、い、い、か、し、ら?」ニコ バチバチ上条「よくありません!!からかい過ぎました!!すみませんでしたぁーーーーーーーー!!!!!!!」カミジョウハニゲダシタ!美琴「逃がさないわよ~~~~~~~~!!!!!!!!!!」ダダダダダダ上条「不幸(しあわせ)だーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」完全下校時刻を結構過ぎた頃 常盤台女子寮美琴「ただいま黒子ー。そしておやすみー」ボフン白井「おかえりなさいませお姉様。そしておやすみなさいですの」白井(またこんな夜遅くに……久しぶりに上条さんと追いかけっこでもしましたのかしら?………むむむ!!?? な、何ですの!?お姉様から溢れ出ているあの幸せオーラは!!!!!ま、まさかあの上条さんと進展が………?)白井「………あんの類人猿がぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」美琴「むにゃ……黒子うるさい」ピリッ白井「ぐえっ!?お、お、姉……さ……ま………」ガクッ美琴「むにゅ………えへへ~当麻大好き~♪」
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小ネタ 上琴バカップル合体攻撃 謎の敵「ふはははは!もうお終いか?」上条「くそ・・・・」美琴「まずいわね・・・・」上条「こうなったら・・・・アレをやるぞ美琴!」美琴「分かったわ当麻!」上条は両手を頭上に突き出して地面に寝そべった。美琴「続いて当麻の体を砂鉄で包み込んで!」右手以外を砂鉄で包まれる上条。美琴「後は超電磁砲の要領で打ち出す!チェイサー!!」上条美琴「「超電磁スピーーーーーーン!!!」」上条は高速回転しながら敵目がけてつっこんでいった!謎の敵「な、なんだとーーーー!」ドカーーーーン!上条「俺達の勝ちだ!」美琴「やったわね!当麻!」ピーポーピーポー美琴「当麻~~~~!何でこんなボロボロに~~~~」救急隊員「お前がやったんだろ・・・・」END(ひでぶ!)
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記 かおり 「なんて酷いお方なんですか!! そのトウマとやらは!!」 「そうよね!! やっぱりそう思うわよね!!」 そろそろ隣の泡浮と湾内が苦笑しているのに気がついて欲しい。 もう、日差しが大分傾いてきていた。 4人はレストランから場所を移して、学舎の園の喫茶店、その外の席でお茶をしていたのだった。 つまり婚后と美琴の叫び声は通行人に騒音として認識されている。 「まったく信じられませんわ!!」 「そうそう!!」 「こっちが一緒にいたいという気持ちも考えず」 「まったくまったく!!」 「自分勝手に好きなことを言って!!」 「そーだそーだ!!」 間に赤面もののセリフがあったのだが、美琴は気付かない。 なんていったって嬉しいのだ 最近美琴の回りの対応が雑なのだった。 こうやって上条の愚痴を聞いてもらおうとしても、 佐天は「そうですか~」と言いながらニヤニヤしたあと、いつの間にか自分が赤面する展開になるし、 白井なんて論外だし 初春は「たいへんですね~」と言いながら、パフェに感動したりパソコンで仕事したりしている。つまりは聞き流している。因みに、白井の美琴に対する愚痴でも同じ対応なのを美琴と白井は知らない。 とにかく、美琴は一緒に怒ってくれる人が欲しかった。 しかし、少しずつ事情が変わってきたのだった。 「こんなに一緒にいたいと言っているにも関わらず……」 「あ、ごめん、わたし一緒にいたいとか、言ってないんだ」 言えたら苦労しないのだった 「……そ、それでも御坂さんの家から御坂さんを追い出すなんて!!」 「え、えーと、自分から出て来ちゃってたり」 「うっ…………か、関係ない御坂さんを無理やり巻き込み育児の苦労を押し付けて……」 「家事も育児もきれいに分担してるし、わ、わたし、自分から手伝いたいって言った気が……」 「か、カンザキとやらを呼び寄せて御坂さんを余所にイチャイチャするなんて!!」 「……えーっと、別にイチャイチャしてなかったし、そもそも神裂さんは呼ばれたんじゃなくて自分から来たような~……あれ?」 と、いうことはつまり 「そ、それではそのトウマとやらにはなにも過失がなくなってしまいますわ」 それではおかしい、では何故自分はイライラしていたのだ? 誰に対して腹をたてていたのだ? 「…………あっ」 そっか 「わたし」 すぐに、否定して欲しかったんだ 「関係ないと、言われたくなかったんだ」 しばらく、音が消えていた。 それを打ち破ったのは、あの パンッ という威勢のいい扇子の音 「甘いですわ!! 御坂さん!! あなたらしくもない!!」 一方、 「お、お前らが話を聞いてくれるって言ったから話したのに、ふ、不幸だ」 上条はベンチの上でボロ雑巾と化していた。 青髪、吹寄、姫神が、どうかしたのか? と聞いてきてくれた。 だから、現状を説明した。 終わった瞬間にゴッド・デコとエロサタンに殺されかけた。 上条に同情するやつはいないのだった。 「で。御坂さんと住んでることは置いといて。何を悩んでたのか教えてほしい」 上条は、何も言わず起き上がる。 口を動かしたのは、少ししてからだった。 「……美琴に、無理させてたんじゃないかって思ってさ。アイツ、この夏休みほとんど遊びに出掛けてないんだ。実家にも帰ってない。 もし、オレたちが美琴と関わらなければ、アイツはもっと夏休みを楽しめたんじゃねーかって思って……」 夕日が上条の表情に影を作る。 そんな上条に、静かに声がかけられた。 「……違う。上条くんの悩みはそれじゃない」 3人が驚きの表情を姫神に向ける。 しかし、上条と他の2人は驚きの中身が異なる。 青髪と吹寄もそれには気付いていた。しかし、それを口にできなかった。 彼女のことを思って。 「ど、どういうことだ? 」 「……それは。上条くんじゃなくて。御坂さんが悩むような内容。上条くんが悩むなら……」 そこまで言って、姫神は口を閉ざす。 上条には、夕日が逆光となり、姫神の表情がよく見えない。 でも、その表情は、泣いているように見えた。 「……上条くんが。悩むなら。どうやって御坂さんと一緒にいられるか。とかになる」 風が吹く 扇子が婚后の髪をなびかせた。 「直接言葉にせずに、自分の考えをわかってもらおうなんておこがましいですわ!! いつも、まっすぐに自分の考えを行動に移していた御坂さんらしくありません!!」 夕日が姫神の髪を焼く 彼女は凛と言い切った。 「正しいとか。迷惑とかじゃなくて。上条くんがどうしたいのかだと思う。そして。ダメもとで一回。御坂さんに頼んでみたらいい」 私なら、という言葉は飲み込まれた。 上条と美琴は素直ではなかった。 今回は単にどちらからでもいい、一緒にいたいと言えばよかっただけの話。 そして、それを望むものはもう1人いる。 夕日は神裂とインデックスにも降り注ぐ とある二人がおいかけっこをしていた土手を神裂は歩いていた。 「ぱーぱ、まーま?」 「ぱっぱまんま? 早く食事にしたいと? ……この姿でもあなたは相変わらずですね。でももう少し待ってくださいね。今日は、御坂にありがとう、またね、パーティーですよー」 草がざわめく、 何かを、インデックスは感じ取った。 「御坂には感謝しなければいけませんね」 インデックスの瞳が揺らぐ。 「楽しみですね、明日からは私と上条当麻、そしてあなたの3人での暮らしが始まるんですよ!!」 それを言った瞬間、神裂の視界がぶれた。 頭部に衝撃を受けたのに気付き、平衡感覚を取り戻すより先だって、反射的にきれいな体勢で着地したのは、さすが神裂であるというべきだろう。 神裂は戸惑う。 なぜ、こうなったのかわからない。 目の前には、何本もの空を舞う巨大な黒い刃。 それを自在に操るは 「う~~~~~~」 赤面し、目に涙を浮かべ、 宙に浮く赤ちゃん。 いや、魔道図書館だった。 「だーーー!やーーーーー!めーーー!!」 全ての刃が神裂に襲いかかる。 「!!! インデックスが、泣いてる?」 美琴は倒れる椅子に目もくれず立ち上がった。 一瞬3人は驚いたが、静かに微笑む。 「御坂さま、是非行ってあげてくださいな」 「え?」 「その赤ちゃんが泣いているのでしょう? ママがいてあげないと可哀想ですわ」 「……湾内さん、泡浮さん……」 「御坂さん、今日は、心ここにあらずというようにお見受けしました。きちんと、自分の気持ちを伝えてきてくださいな。その後、機会があれば、また遊びましょう」 「婚后さん……ありがとう」 美琴は笑って、近くの建物を使い、飛んでいった。 走っていくことすらしなかった。 一瞬あっけにとられた3人は少しして微笑む。 「素敵、ですね」 「そうですね、うらやましいですわ」 「でも、少し悔しいです、御坂さんにそこまで思われるお友達なんて」 「「………………え?」」 「え? なんです?」 上条はふと立ち上がると、顔を姫神から反らし別の方向に視線を向ける。 多摩川の方向だ。 姫神がその横顔に、静かに語りかける。 「いろいろ複雑に考えないで。上条くんがどうしたいかで動いた方がいい。その方が上条くんらしい」 上条は驚いた表情で姫神の顔を見た。 彼は微笑むと、再び顔を多摩川の方に戻す。 そして、言った 「前、美琴にも、同じこと言われたなぁ」 姫神の表情が固まる。 上条は何かを感じ、横を向こうとした。 しかし、背中から衝撃を受け、強制的に体ごと多摩川の方を向く。 それをした犯人の青髪が無理やり上条と肩を組んだ。 「あーあーカミやん!! 楽しそうやね!! 夏休みに嫁さんと赤ちゃん作って夫婦ごっことはさすがのボクもそこまで「う、うるせぇ!! そんなんじゃねぇよ!! 耳の近くでマシンガンのように大声出すな!!」のことは妄想でもしなかったわ。とにかくカミやんをその御坂さんと赤ちゃんが待っとるんやろ? さっさと帰ってあげてーや」 後ろを見ずに全力疾走してくれへん? 後ろを見たらぶっ殺すで。 なんて理不尽に対して文句を言う前に、 よーいドーンという吹寄の声と共に青髪に背中をおもいっきり叩かれた。 いつものセリフを口にしながら上条は走る。 未だに青髪がなにか叫んでいた。 上条は振り向かないでくれた 涙は吹寄の肩が受け止めてくれた 嗚咽は青髪の声が打ち消してくれた そして、 一人の少女の恋が終わった。 「ねぇ、これから3人でどこかいかない?」 「お、ええね。いこうや」 「コイツが奢ってくれるって」 「あれ? 姫神はともかく吹寄にも奢ることになってへん?」 「細かいことは気にしないの。姫神さん、とことん付き合うわよ」 「…………ハンバーガー。20個。やけ食い」 「……容赦ないね。ま、新学期にどうやってカミやんを懲らしめるか相談といこか」 神裂は、紙一重で攻撃をかわす。 「どうしたというのですかインデックス!!」 「だぁーーーーーーーーー!!やぁーーーーーーーーー!!」 神裂は かわすことに専念する。 下手に反撃してインデックスを傷つける訳にはいかない。 しかし、先程より少しずつ刃の数が増えていく。 このままではいつか刃が神裂に届くだろう。 思考を重ねている間にも刃は増えてゆき、ついに神裂の頬に届いた。 そして神裂を包囲する。 しかし、その時間は一瞬で終わった。 「こら!!! 何してるのインデックス!!」 雷電が刃を消し去ったからである。 神裂とインデックスの間に降り立ったのは、 超電磁砲、御坂美琴だ。 神裂は助けられたが、 その美琴を止めようとした。 先程の雷撃が危うくインデックスを傷つけるところだった。 しかし、声をかけようとした神裂の動きは止まる。 それは、 「魔術は私達が周りにいて、いいって言わないとつかったらダメだって、何度言ったらわかるの!!」 その、怒気に飲まれたからだ。 インデックスも体をびくつかせ、ふわふわと着地する。 静かにインデックスに近づく美琴。 インデックスはつい目をつぶった。 そのインデックスを美琴は そっと抱き上げた。 「どうして魔術を使ったの? 何か嫌なことがあったのかな?」 インデックスが目を開くと、 優しい、それでいて怒ってて、さらに悲しみを帯びた美琴の顔が見えた。 安心した。 「ま、むぁ~~ま~~、ピぇ~」 「ん? どうしたのかなー、よしよし」 ようやく神裂は気づく。 隣に上条が立っていることに。 「大丈夫か? 神裂?」 「え? ええ」 「悪いな、最近は魔術使うことがなかったんだけど」 「…………最近?」 「あぁ、最初は大変だったんだ。 ちょっと嫌なことがあったらすぐ魔術を使ってさ、しかもものすごいのを。 オレと美琴が全力で止めてたんだぞ」 そこで、ようやく気づく。 ここに彼女が到着したときの雷電がインデックスを傷つける訳がなかったのだった。 あの雷電は経験に則り、適切な加減で放たれたものだから。 「インデックス、なんで魔術使ったんだ?」 ふと、気づくと、上条は自分の横から彼女達の隣に移動していた。 「ぱ、ぷわぁ~~ぱ~~」 「お? どうしたどうした?」 「なんか今日は甘えん坊ね、どうしたんだろ?」 神裂はその光景に見覚えがあった。 ただ1つ違うとしたら、 あの子の表情だけだった。 だから……決めた。 「……美琴、ちょっと話したいことがあるんだ」 「……奇遇ね、わたしも話があるんだ」 少しの間お互いを見ていた上条と美琴だが、近づいてきた足音に顔を向ける。 「お二人に、話があります」 上条当麻、御坂美琴、そして神裂火織の3人はなぜかフローリングに正座していた。 上条の右隣が美琴、二人の正面に神裂が座る。ちなみにインデックスは上条と美琴の間に座り、二人のズボンとスカートをぎゅっと握りしめている。 どこかからかししおどしの「カコーン」という音が聞こえた。 「すみませんでした!!」 大和撫子の美しい土下座である。 当然2人は慌てた 「な、なんだよ!!」 「先ほど、イギリス清教より、連絡がありまして、至急戻るようにとのことでした」 「……神裂さん、許可取って無かったんだ」 「そのため、その子と上条当麻の面倒をみるということは、できそうにありません」 神裂は、美琴を見つめる。 「そこで、御坂にお願いがあります。二人の面倒を、このまま見続けてくれないでしょうか?」 「へ? え? はい、わかりました」 「即答かよ!!」 つい隣の上条がつっこみ、 それに、「だ、だって」なんて応える美琴。 そんな二人を見つめていた神裂は、微笑み、立ちあがる。 何故か口論になっていた二人はそこでようやくケンカをやめた。 「それでは、失礼します」 「へ? もう行くのか?」 「1泊くらいしていけばいいのに」 「いえ、仕事がたまっていますので」 「……神裂、仕事も置いて来たのかよ」 「それでは、また会いましょう、インデックス」 そう言って、赤ちゃんに顔を近づけた神裂の顔が驚きに染まる。 「かおり、よししー」 神裂の頭をなでなでするインデックス。 (……まったく、敵いませんね) 「ありがとう、インデックス」 そうして、彼女は窓から飛んでいった。 「……って、窓はこのまま放置かよ」 「……そういえば、当麻、話があるとか言ってなかった?」 「ん? あぁ、さっき美琴が即答した神裂のお願いと同じさ」 「なんだ、それか」 「で、美琴たんの話ってばなによ?」 「たんいうな。さっきわたしが即答した神裂さんのお願いよ」 「同じかよ」 「同じね」 真顔のまま話していた二人は、そこで笑いあった。 月光が差すビルの屋上。 「おっす、ねーちん」 暗闇の中から音もなく出てきたのは、 金髪に青いサングラス、 アロハシャツという、「胡散臭い」を体現した男だ。 「学園都市に来るんだったら前もって言って欲しかったぜい。そうしたらオレが新兵器『堕天使エロメイド防御力30%ダウン』を貸してやったんだがにゃー」 「土御門……ありがとうございました」 「……は?」 土御門は真顔になった。 彼の想定ではここで真っ赤になった神裂を拝みながら、彼女の突っ込みモーションを回避。 それが「ありがとうございました」とは不穏である。 まさか、今までありがとう、てめえのことは忘れないからさっさと地獄に行けコノヤロウってことなのか? 「……どうして顔色がサングラスと同じになってるんです?」 「ま、待ってくれ、ま、まだオレにはやることが……」 「は、はぁ」 「……コホン、ありがとうってどういうことだ? 感謝されることした覚えは無いぜよ」 「……今まで、私の恩返しに付き合ってくれたことへの礼ですよ。彼への恩返しの方法がわかったんです。彼とインデックスと……御坂の平穏を、全力で助けることです」 闇が静寂を強調する。 最初は動揺していた土御門は、 少しの間、言葉を真剣に考えた。 しかし、 「……ねーちん、いいんだな?」 そんなありふれた言葉しか出ない。 月光が、神裂の瞳に浮かぶ雫を光らせた。 「はい、私は、彼に感謝しています。……彼は、始めて、私を……」 不幸(幸せ)にしてくれたのだから。 同じく、月光が降り注ぐ研究室。 「……ついに、ついに、完成したか」 かつて幻想御手を作成した女性の瞳が暗闇の中で光る。 「フフッ、フハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」 下着姿な彼女に対し、ツッコミ役が誰もいないことを嘆きつつ、 このあたりで今回は終わりとします。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/一端覧祭 2日目 上条当麻は土御門と青髪ピアスとともに行動していた。 「いくら7日あるからといって全部回るのは無理があるにゃー。 何せ、学園都市の全学区全学校でイベントがあるしにゃー」 土御門が分厚いパンフレットに目をやりながら説明する。 「手当たり次第っていう手段もあるんやけどね」 と言う青髪ピアスはキョロキョロと辺りを見回し、美少女を探している。 そういえば青髪の携帯は可愛い子の写真が大量に保存してあるんだよな と思いながら上条は提案する。 「とりあえずなんか食おうぜ。 腹へっちまった。」 「オーケー、いくぜよ!」 「ねぇねぇ御坂さん、 すぐ近くでゲコ太のショーやってますよ?」 「あ、ホントだ、御坂さん行きます?」 パンフレットを見ながら提案する佐天と初春だが、 美琴はどこか上の空といった感じで聞いていない。 「…御坂さん?」 「え?何?初春さん?」 「お姉さま?昨日からどうしましたの? まさかあの殿方と何かありましたの?」 言われて美琴はハッとした表情になる。 今の美琴は昨日の事で思い切りへこんでいる。 自分をすっぽかした上条に対して落ち込んでいて、 意固地になってしまって素直になれない自分に対して苛々していた。 「お姉さま?体調でも優れませんの?」 「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど…」 (そうよ。なんで私があの馬鹿を起点に 一喜一憂しなきゃいけないのよ) 自分を落ち着かせ、 無理矢理『いつもの自分』を作りだす。 「別に普通よ。さぁ、ゲコ太のショーに行きましょう?」 「にゃー、今日も楽しかったにゃー♪」 「せやな♪べっぴんさんもぎょーさんおったし♪」 「今日もわたくし上条当麻はトラブル続きだったけどな!!」 「ま、結果オーライだにゃー。」 (そうだな…幸か不幸か美琴に今日会わなかったしな。 最終日までに機嫌直るといいけど…) などと、半分は自分が美琴を落ち込ませたにも関わらずに少しだけ悩む。 「今日は楽しかったですわね。 ね?お姉さま?」 「そうね、ゲコ太のショーも楽しかったし」 運よく今日は上条当麻に会わなかったので いい気分転換になったと彼女は思う。 しかし、気付けば常に彼のことを考えていた。 (最終日…ちゃんといられるかな…アイツ怒ってるかしら…) ため息をついて、ベッドに横たわる。 あれこれ考えている内に美琴は寝てしまった。 3日目 上条はインデックス クラスメート達と回り、 腹ペコシスターに幾度となく頭を噛まれ、 美琴は佐天と初春、白井と回り、頭の中では上条のことを考えていた。 4日目 この日も不幸な上条は一緒にいたメンバーに笑われ、美琴はやはり上条のことで頭が一杯だった。 5日目 上条は前半、クラスの催し物に参加し、 後半からはインデックスの保護者として頭を噛まれた。 美琴は学校全体の催し物に参加し、1日を終えた。 そしてその夜 ゲコゲコ…ゲコゲコ…ゲコゲコ… 「母か…」 「もしもし?」 『お母さんよ~♪お祭りは楽しめてる?』 「一端覧祭?まぁまぁかな…」 『まぁまぁ…ね』 「?、どうしたのよ…」 『まぁまぁしか楽しめない理由は…上条当麻君とのことじゃない?』 「ッ!!なんで…知ってるの…」 『実はね…1日目のとき、美琴ちゃんと彼が歩いてたのを見つけたから 好奇心で後をつけていたの』 「…は?ちょっと何やって…」 『まさかああなるとは思わなかったから… それでも後つけてたのは謝るわ それで、心配だから電話したのよん』 「見てたの…」 『後で幾らでも怒っていいから、話を聞いてもらえる…?』 「…」 『美琴ちゃんは…彼が好きなのよね…?』 「……うん。でもアイツはちっとも私のこと考えちゃいないし…」 『美琴ちゃんは素直にならないから、彼も困ってるんじゃないかしら? 彼、鈍感でしょう?』 「そうね…超鈍感だわ」 『そういう子には素直に真っ直ぐ気持ちを伝えなきゃダメなの。 あの彼は特にそうかもね…』 「でも、アイツきっと怒ってるわ…」 『そこはちゃんと謝らなきゃ♪彼はきっと怒ってなんかないわよ?』 「…そう…かな?」 『そうよ、あとですぐに彼に電話して、 最終日にちゃんと楽しめるように仲直りしなきゃね』 「うん……って…なんで最終日に約束してることを知ってるわけ?」 『美琴ちゃんのことならなんでもお見通しよん♪ 彼をずっと一緒にいたいなら 最終日、素直に気持ちを伝えること。わかった?』 「…え、あ、ちょっとぉ!」 「切れちゃった…ったく… 自分の気持ち… まずは、前のこと謝らなきゃ…」 美琴はそのまま上条へ電話をかける。 『もしもし、御坂?』 「あ、うん」 『どうした?』 「その…この前は悪かったわ… 私も大人気なかったというか…」 『あぁ、俺も悪かったよ約束破っちまってゴメンな』 「それは…いいんだけど、最終日、一緒に回ってくれるよね…」 『当たり前だろ?約束したしな。次はちゃんと約束守るよ 俺はむしろ、御坂が俺に怒ってるもんだと思ってて…その、 俺から先に謝りの電話でもしようと思ってたんですが 怒ってないでせうか?』 「…うん…怒ってない…大丈夫 …よかった…最終日にまたアンタと一緒に回れるのね」 『予定が白紙になるのも寂しいしな…それにしても、今日の御坂はなんだか素直だな』 「そ、そう?え、あぁ…そ、それじゃ!」 『またな、美琴』 (あれ、今…名前で…?) 「ね、ねぇちょっと!今アンタ名前で……きれてる」 携帯を閉じると、タイミングよく白井黒子がバスルームから出てくる。 「お姉さま?誰と電話してらしたの?」 「え?あぁ、母とその…アイツと」 「あらまたあの殿方ですの…お風呂、空きましたわよ」 「あぁ、うんサンキュー」 そわそわとした動きで美琴はバスルームへ入っていった。 「…ぶふふふふ…途中から…ゼンブ聞こえてましたの… あの類人猿がぁぁぁぁ!」 6日目 上条は学校全体の催し物に取り組んでいた。 1年生である上条は土御門たちと2、3年を持ち上げるために舞台裏スタッフに 強制的にまわされる。事務的な仕事だったり、接客業務だったりと大忙しだ。 今日も不幸な上条は小さなトラブルの連続で疲弊していた 「はぁ…疲れた…1年って雑用ばっかなのな…」 「…さすがにこたえるにゃー」 「たいした学校でもないのに、客足は増えるんやね…」 こっそりと体育館の倉庫で休んでいた3人だが、倉庫の扉が開く。 そこにいたのはクラスメート兼実行委員の吹寄だった 「見つけたわよ…サボらないできちんと仕事しなさい!」 ゴゴゴン!という打撃音だけが響き、3人は再び持ち場へとかりだされた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/一端覧祭
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例えばこんな1月31日(記念日) 1 1月31日 授業終了後―――とある高校のとある教室。今日は珍しく、デルタフォース事クラスの3馬鹿、上条・土御門・青ピの3人を含めて誰も補習が無い日である。即ち、担任の小萌先生と触れ合えないなら長居は無用とばかりに青ピは既に帰っていた。しかし、教室には珍しく何やら悩んでいる様子の土御門元春が居た。 気になって声をかける。「土御門、お前がそんなに悩みこんでるなんて珍しいな。 どうかしたのか?」「いや実は… 今日が1月31日だから悩んでるんだにゃー。」「1月31日? 今日って何かあったっけ?」課題の提出日でもない。 かと言って、どこかで何かのイベントがあった訳でもなかった気がする。答えが見つからず、頭にハテナマークを出したまま上条も考え込んだ。「カミやん、ひょっとして知らないのかにゃー? 1月31日は『愛妻家の日』なんだぜい。」そう。 1月31日は英語のI(アイ)と、数字の語呂合わせの31(サイ)にかけて「愛妻家の日」とされていた。その日は、既婚男性が妻に日頃の感謝と労いの言葉をかけると、日本は少し平和になるかもしれない。 という思いから提案された日である。だが学園都市はその名の通り学生が中心の都市だ。 勿論、教職員を始めとして大人もそれなりには居るのだが、数は圧倒的に少ない。普通であれば、学生にはそんな話は無縁である。だが、ノリの良いとある男子学生が「みんな『愛妻家の日』って知ってるか? 1月31日は実は、既婚男性が妻に感謝する日なんだぜ。 けど、俺はこの日に彼女への想いや日頃の感謝を改めて伝えたんだ。 そしたら、マンネリ気味だった仲が再びアツくなったんだ!」などと、海外の通販番組に出てくるセールスマンよろしくその際の軽いレポートを含めて書き込みをした。すると怪しい書き込みが逆に受け、1月31日だけでなく「オレもやってみた」と言う者が徐々に出だして主に彼女が居る男子生徒に広まったのだった。「そうなのか? 知らなかった。 …でも、『愛妻家の日』って言っても、俺ら学生なんて結婚してる奴なんてそうそう居ないだろ?」話を聞いた上条はありがちな反応を示す。 「愛妻家の日」自体、一般的には余り有名でないので無理も無いのかもしれない。しかし土御門は上条の反応を想定していたかのように返事をした。「それだからカミやんはダメなんだにゃー。 『愛妻家の日』ってのは、別に奥さんに愛してると言うだけじゃないんだっつの。 それに、お前も独り身じゃなくて例の超電磁砲(かのじょ)と付き合ってるんだろ? カミやんなら、どうせ常日頃から色々と世話になってるんだろうから、偶には労いの言葉でもかけてやれ。 でないと、逃げられちまうぜい?」逃げられてしまう、という言葉に反応したのか、上条の反応が一瞬だが止まる。「で、でもなぁ… 急にそんな事言われても、いざ言うとなると言い出し難いと思うぞ?」何の脈略も無くそんな事を言う自分。 …を想像して寒くなる。「いきなり言えれば良いが、流石にそんな事は無理な場合が多いぜい。 だからこそ、すんなり言えるムードってもんを作って言い易くするんだにゃー。」だからお子様は、と言わんばかりに土御門が右手の人差し指を揺らしながら、チッチッチ…と軽く舌打ちしてきた。彼女が居る、という観点からすれば自分の方が先輩のハズなのに、という疑問が沸いたがそっと横へ置いておいた。土御門が言いたい事が上条にも何となく分かる。 だが、そういった方面は勉強以上に苦手な上条は自分では良い作戦は思い付かなそうだ。「なる程なー。 で、土御門は何か良い案でも浮かんでるのか? 良ければ参考として聞きたいんだが良いか?」聞けばとりあえずでも参考になるかもしれない。 そう思い、土御門に聞く事にしたのだが…土御門から、あからさまに勿体ぶる様なオーラが出始める。殴りたいとは思ったが、一先ず我慢である。 殴る事自体はいつでも出来るのだ。「仕方無い… 他ならぬカミやんだから教えてやる。 でもあくまで参考であって、真似されると困るんだにゃー。」やっと教えてくれる気になったようだ。 上条は念のため、後一押ししておく事にする。「流石は土御門大先生! 出来る男は違いますなぁ…」「だろう? んで雰囲気作りだが、女性はやっぱりアクセサリーを始めとしてプレゼント系に弱い。 だからまず、オレは服をあげるんだぜい。」「おぉ! 本格的だな。 それで、土御門はどんな服をプレゼントするんだ?」意外と参考になりそうだ、と思い直し更に情報を引き出してみる。「ふっふっふ… カミやん、聞いて驚くなよ? 今年は何と! 英国の某デザイナーからわざわざ取り寄せた、小悪魔ベタメイドのメイ―――」言い終わる前に、上条は土御門の左こめかみに鉄拳を叩き込んだ。机を巻き込む、グワッシャー!という壮絶な音と共に、土御門の体が倒れる。「か、カミやん! せっかく教えてやってるのに何するんだにゃー!!」周りの机を退かせつつ、抗議の声が上がった。「てめぇはただ、記念日とやらにかこつけて己の欲望まっしぐらなだけだろうが!」上条は「話を聞こうとして損した」と言いたげである。しかしふらふらと立ち上がった土御門の方も、これだからお子様は… と呆れた様子だ。「メイド服と言えば、堕天使メイド・堕天使エロメイド・大精霊チラメイド・小悪魔ベタメイド・女神様ゴスメイドなど確かに数はある! だがコスプレで本当に最強なのは、偉大なるロリの御使い『小悪魔ベタメイド』こそが一番なんだぜい!!」何でもかんでもロリへと繋げるお馬鹿が約1名。 堪らず上条も言い返す事にする。「馬鹿野郎! コスプレと言えば、キャビンアテンダントのお姉さんも捨てがたいだろうが!!」……どうやら、別の方向で上条の「何か」が刺激されてしまったらしい。「くっ! いきなりキャビンアテンダントを出すとは… 中々やるな!カミやん!! それならオレは―――」先程までの「彼女を思いやろう」という話と気持ちは何処へやら… である。しかも、徐々に当初の話題からずれ出した事も気にせず、アツいコスプレ議論から「どんなポーズが刺激的なのか?」という議論に移ろうとしている。教室内はというと、彼女云々の話には入り辛かった独り身の男子生徒諸君も議論に加わり、更に白熱していく。何と言うか…… 今日はこんな感じで平和なのかもしれない。しばらくぎゃあぎゃあと騒がしかったクラスだが、突然、ゴンッ!という鈍い音が聞こえた。後頭部に衝撃と痛みを感じ、上条は身体が吹き飛ばされる。上条が先程まで自分が居た位置を見ると、そこには怒りに満ちた吹寄が立っていた。わなわなと震えるその身体には、何故かその後ろにゴゴゴゴゴ… と紅蓮のオーラをまとっているようにすら感じられる。「上条! 貴様のせいでさっきから掃除が終わらないのよ! 下らん話をしてるだけだったら当番の邪魔になるからとっとと帰らんか、この馬鹿者!!」騒いでたのはオレだけじゃない!と主張しようと辺りを見回す。 が、近くの土御門以外はいつの間にか教室から逃げ出すか掃除当番に戻るかしてしまったようだ。文句を言いかけたが、吹寄が更にゆらり… と近付いて来る。これ以上長居すると身体が持たない!身の危険を察知した上条と土御門はそれぞれ自分の鞄を掴むと、脱兎の如く急いで教室から逃げ出したのであった。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 同日 美琴の放課後―――授業も終わり、美琴はいつもの様にとある公園にて彼氏である上条が来るのを待っていた。昨日雪が降ったばかりの雪がそこかしこに残っており、ベンチもまだ濡れている。 おかげで座って待つ事もできない。(もうすぐ1年… か…)あっという間だったな、そんな感想が胸の奥に広がる。昨年の冬、バレンタインデーの際に勇気を出して想いを告げ、ホワイトデーに晴れて上条の恋人となった。途中紆余曲折は合ったものの、自分の想いが伝わった事に美琴は感謝した程だ。春休みには2人で映画を観に行った。 5月の大型連休には第6学区のアミューズメント施設に連日出掛けた。夏休みには上条とだけでなく、黒子や初春さん、佐天さん達と一緒に夏祭りにも出掛けた。大覇星祭には再び勝負を繰り広げた。 一端覧祭には2人で色々と観て回ったのが上条の友達にバレ、2人して色々と弄り倒されたりもした。クリスマスにはお揃いのアクセサリも購入したし、年末年始には2人どころか両家併せて過ごしたりもした。全て良い思い出である。その全てにおいて、美琴の隣には常に上条の笑顔があった。しかし、その一方で不安も抱えていた。上条は相変わらず「何か」に巻き込まれていたのだ。 突然、フラッと居なくなったかと思えばいつの間にか戻ってくる。「戻って来た」と分かるのは大抵、いつもの病院・いつもの医者から連絡によって知る事となる。未だにそういった事に巻き込まれている状態なので、不登校&入院分のツケを補習と課題提出という形で補わなければならない。補習はともかく、課題提出は上条1人に任せておくと仕上げるのでさえ満足に終わらない事も多い。結果、平日の放課後やせっかくの週末を潰して課題を手伝う事が多くなっている状態である。もちろん「課題の手伝い」と称して上条の部屋で2人だけでゆっくり過ごすのも楽しい。だが、(やっぱりこの状況って、何か違くない?)とも思ってしまう。 その都度上条は、「美琴のおかげで助かりまくりですよ。 上条さんは頭も上がりません。」と彼なりに感謝の言葉は述べているのだが…(何だか私って、課題手伝ったり料理作ったりしてくれる「都合の良い女」になっちゃってる気がしないでもないのよね…)そんな風に考えると少し悲しくなってしまう。 勿論、それは自分の思い過ごしだと思いたい。悶々とした気持ちを払拭すべく、機会を見つけては上条に尋ねていた。「ねえ当麻。 私の事… 好き?」そうすると、決まって「勿論好きだぞ? 上条さんには美琴しか居ないからなー。」いつものように決まりきったテンプレートの様な答えが上条から返ってきていた。決まりきっていてもそれを聞いて安心する。 だがそれと共に、少しの自己嫌悪にも陥るのだ。(アイツが鈍感で、そういう事に疎くて行動に起こすのも得意じゃない。 ってのは分かってたハズなんだけどなぁ。 でも、もうちょっと好きって気持ちを態度で示してくれると嬉しいのに。 そうすれば、私ももっと安心できると思うんだけど…)はぁ、と深い溜め息をつく。分かってはいるものの、やはり言葉だけでなく態度でも示して欲しいと思う時もある。(でも、だからってそんな事くらいで別れるなんて出来ないのよねー、私も。 アイツは変にフラグ立ててモテるから、別れた途端に誰かに取られそうだし。)普段、上条から子供扱いされると怒っていた。 だが結局の所、上条に対して恋人としての考え方を押し付けようとしている自分はまだまだ子供なのかもしれない。そこまで考えた所で、ふと上着のポケットから先程街角でもらったチラシを思い出し、取り出した。チラシはバレンタインデーを宣伝するチコレート専門店のもので、見出しとしてこう書かれている。―――あなたの想い(きもち)、バレンタインデーに改めて形にしませんか?(もうすぐ、1年… でも、結局まだ1年も経ってなかったのよね。)結局の所、そうなのだ。 まだ1年しか経っていない。これまでは、自分が越えたいと思った壁は乗り越えてきた。 だからこそのLEVEL5でもある。しかし今は思うように解決できず、1年足らずでこんなにも迷っている自分が居る。ふと、いつだか流行った歌の歌詞を思い出した。(迷いなんて吹き飛ばせばいい、か…)上条から返事を貰い、晴れて彼女と慣れた時を改めて思い出した。 あの時自分にした約束、それを改めて思い出す。(そうよね。 いつまでも迷ってるなんて私らしくない! よ~し!!)先程までの迷いを捨て、再び頑張ろうと決意する。鞄の中の携帯からゲコゲコと音がした。 鞄を開けて携帯を取り出し確認する。どうやら上条からメールが来たようだ。 早速内容を確認する。 From : 上条当麻 題名 : 帰り 本文 : 少し寄り道するから遅くなるかもしれない。 でも、夕方くらいまでには帰れると思うから心配しないように。美琴に自然と笑みがこぼれた。 その笑みは自嘲するような暗いものではない。昔はこちらから送ったメールにすら満足に返信が来なかった。 だが今は上条からこうして連絡をくれるようにもなった。(アイツも少しずつ変わってるのよね。 それなら、もっと「自分を見てくれている」と思えるまで頑張れば、きっと…)そう思い、早速返信のメールを作成して送った。 To : 上条当麻 題名 : 夕飯 本文 : 夕飯作って待ってるから、早めに帰ってきなさい。携帯を鞄にしまい、さてどうしようか?と考えてみる。帰りに一緒にどこかに遊びに行けなくなったのは寂しかったが、それなら気合を入れて夕飯を作っておくのも良いかもしれない。今日は寒さもあるし、ビーフシチューにでもしようか。圧力鍋で本格的に作ると何気に時間がかかる料理だったので、今までは時間にかなり余裕がある日にしか作らなかった。だが、こんな日だったら作っても良いかもしれない。(よし! まずはアイツの胃袋から掴んでやるんだから!!)いつだか美鈴に教わった言葉を思い出しつつ、美琴はスーパーへと向かった。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 同日 当麻の放課後―――クラスを急いで飛び出した後、上条は帰り道の途中で1人あれこれと悩んでいた。一緒に飛び出したハズの土御門は別の道へと逃げたのか、今は居ない。土御門に少し聞きたい事があったが、どうやら聞けそうにない。聞きたい事、とは勿論「彼女へ感謝の気持を伝える」という事についてである。(うーん… 何かプレゼントするなら服とかが良いんだろうか…)今まで美琴とそれなりに色々な所へと出掛けはした。 だがこうして思い出すと、改まって普段に何かをプレゼントした事は無かった気がする。何を贈れば良いのだろうか。必死に考えようとするが、中途半端に話を聞いてしまったが故に「服をプレゼントする」という事から中々離れられない。(やっぱり、何かしらのメイド服にでもして場を和ませつつ言った方が良いのか?)メイド系の服は上条なりに色々とは見てきた。 しかし、(堕天使… は確か神裂が前に着ていたような…… でもって、大精霊うんちゃらってのは五和が着てたとも思うし…)一体、どんなメイド服が似合うのだろうかと色々と考えてみる。本来の目的から、少しずつズレて来ているのだが上条はまだ気付きそうになかった。(堕天使、ってのも違うし。 かと言って大精霊でもないだろ? 小悪魔… それに、女神様ってのも美琴のイメージとは違う気がするなぁ…)美琴の特徴を活かすなら?と考えた所で、簡単な事に思いついた。(そういや美琴は「電撃使い(エレクトロマスター)」じゃねぇか。 なら、アイツに似合うのは「超電磁ビリメイド」って所か?)うむ、我ながら良くぞ思いついた!とばかりに独りで頷く。だがそこで、「電撃使い」のついでに思い出した事がもう一つ。 何かあるとすぐに電撃攻撃(ビリビリ)してくる、という事だ。(いや待て。 例えば「超電磁ビリメイド」ってメイド服をプレゼントしたとして、自分の方がその後危なくなりそうな気がする…)例えプレゼントしたとしても、素直に受け取ってくれるとは思えない。万が一があって受け取り、着てくれたという事があっても、それはそれで色々な意味で危険な香りがした。やはり服のプレゼント、特にメイド服のプレゼントは止めた方が良いかもしれない。結局どうすれば?と頭をグシャグシャッ!と掻いた所で声を掛けられた。「上条さん、お久しぶりでーす。」「お久しぶりです、上条さん。」1人は快活そうな声で、もう1人は少し甘ったるい感じの声。 上条が振り向くと、佐天と初春が立っている。「おぉ! 久しぶりだな、2人共。」美琴を通じて知り合った中学生の女の子であるが、上条からしてみると話しかけ易い子だった。普段、回りに居る女性陣が良くも悪くもキャラが強すぎる、というのもあるのかもしれない。時々、美琴とのあれこれを聞き出そうとしてくるのは苦手であったが、それ以外は普通に色々と話せる。そんな訳で、美琴が居ない時に出会っても何気ない生活の話など良くしていた。「何か悩んでたみたいですけど、どうかされたんですか?」上条の様子を見ていたのか、佐天が質問してくる。まさか、美琴に何のメイド服を着せようか悩んでた。 とは言えない。 少し考えて、元々考えていた事を思い出した。そのまま答えるか悩んだものの、今更隠す様な事でもないかと考え直す。「いや実はさ… いつも美琴に世話になってばっかりいるから、偶には感謝の気持ちと自分の想いを伝えないと、と思ったんだよ。 でも、普段そんな事してこなかったから、いざとなったらどうすれば良いか思いつかなくてな…」上条の悩んでいた内容を知り、佐天と初春が少し驚いているのが分かる。2人は付き合い始めた頃の鈍感さを知っていたのだから、今上条が考えている事に驚くのも無理は無いのかも知れない。「うーん… 上条さんは御坂さんとはずっと一緒にやっていきたいんですよね?」佐天から早速質問が出た。以前は苦手だったこういった質問も、佐天や初春からの度々の質問攻めで大分慣れた。 自分の想いを素直に伝える。「そうだな。 こんな俺の事、構ってくれるヤツなんて美琴しか居ないだろうし。 それに、色々な考えとか気持ちを取っ払うと、やっぱり最後に残るのは『美琴が好きだ』って事だけなんだよ。」「くっ~! そんなに想って貰える御坂さんって、やっぱり羨ましいな~!!」往来だが、声に出して羨む佐天。 初春の方は?と言うと、こちらもやはり同調する様に頷いている。だが、女性陣としては少し納得いかない部分もあったようだ。「でもダメですよ? そういう風に御坂さんの事を想えるなら、『偶には』じゃなくてやっぱり『マメに』そういう気持ちは伝えてあげないと。」「そうですよー。 でも、『感謝の気持ちを伝えよう』とか思いつくだけでも立派かもしれません。」そう言いつつ、初春は携帯ゲーム機にも見える機械で何かをやり始めた。 どうやら、早速何かを検索し始めたらしい。「初春。 こういう時ってやっぱり、プレゼントとかが良いかな? 何を贈ってあげるのが良いと思う?」「それを今調べようかと。 と言っても、予算次第になるとは思うんですけど… 上条さん。 失礼かもしれませんけど、予算はどれくらいを考えていらっしゃるんですか? 教えて頂けると嬉しいかも。」そういえばこの娘は機械系が得意だったっけか、と操作する姿を見て思い出す。「さっき、それなりに下ろしては来たんだけどな。 無能力者の上条さんに、その辺りは余り期待しないで下さい…」自分で言った事とはいえ、悲しくなった気がする。同じ無能力者として察してくれたのか、佐天は「まあまあ」と慰めてくれた。上条の懐事情を酌んでくれたのか、初春がポピュラーな提案をしてくる。「そうですねー。 それなら、スタンダードにお花とか小物辺りのプレゼントとかいかがでしょう? お花とか小物とかなら、よっぽど凝らない限りそんなに値段もかからないと思いますし。」「花とか小物のプレゼントか… うーん、何が良いんだろう?」花屋なんて普段の上条には縁の無い場所、と言っても過言ではないかもしれない。 店が何処にある、というのさえよく分からない。小物も同じである。 Seventh mist辺りに行けば良いのだろうが、自分1人で選ぶとなると上手く選ぶ自信は無い。さて、どうしたものか。 と考え始めた上条に佐天が提案をしてきた。「お花か小物のプレゼントか… 上条さん。 もし上条さんさえ良ければ、私たちもプレゼント選びに協力しますよ?」「え? 良いのか?」もちろん! と胸を張り佐天と初春が答えた。「上条さんだけで選ぶより、私達も一緒の方が良いと思いませんか? 同じ位の年齢の女性、としてアドバイス出来ると思いますよ。」「そうですよ! それに、私が居れば、その時知りたくなった事が出てきても、色々と調べてお伝えできますし。 プレゼントしたい物が決まったら、それを取り扱ってるお店の情報だって、すぐに調べて御案内できますよ。」私は友達に、ナビ春って言われてるくらいですから!と自信満々で初春も佐天に続けて答える。佐天も横で「流石だね!」と初春を持ち上げている。「悪いな… すまないけど、2人の言葉に甘える事にするよ。」「気にしないで下さいよ。 私達も普段、御坂さんには色々とお世話になってますし。 御坂さんと上条さんが喜んでくれるなら私達も嬉しいよね。」「ですです! それで、肝心のプレゼントは何にされます?」何をプレゼントする、という肝心な所はやはり自分で決めないとダメなようだ。どうするかと考えて、小物などのプレゼントは、贈られた側のセンスに合った物を選べるか? という所が少し気になった。「小物とかのプレゼントは、美琴のセンスに合ったもんを選べるかちと不安だな。 そういうのはまた今度、美琴と一緒にでも選ぶ事にするよ。」「多分ですけどー、上条さんが選んでくれた物なら喜んでくれるとは思いますよ?」そんなに気にしなくても大丈夫、とでも励ますように初春が答える。「小物よりは値段が高くなるかもしれませんけど、それなら無難にお花のプレゼントにしませんか? 初春、この辺りの近くにあるお花屋さん調べてくれないかな?」「了解です! それじゃ早速調べてみますね。」初春が早速花屋を調べ始めてくれたらしい。 上条は今のうちに、と携帯を取り出して美琴に連絡しておく事にする。 To : 御坂美琴 題名 : 帰り 本文 : 少し寄り道するから遅くなるかもしれない。 でも、夕方くらいまでには帰れると思うから心配しないように。メールを送ってから程なくして、美琴からの返事が返ってきた。 From : 御坂美琴 題名 : 夕飯 本文 : 夕飯作って待ってるから、早めに帰ってきなさい。返って来た文面を見て、何故だか尻に敷かれている亭主の気分がした。 …が、きっとそれは気のせいだろう。苦笑しつつ上条が携帯をしまうと、丁度初春から声がかかる。「早速、この辺りで良い感じのお花屋さんがいくつか見つかりましたよ! あとは… どこが良いでしょう?」初春が迷ったそぶりを見せると、佐天が「どれどれー?」と画面を覗き込む。「ここが良さそうじゃない? ここなら、プレゼント用のお花を色々と取り扱ってるみたいだよ。」「ふーむ… あっ! そこなら私、道分かりますよ。 そこまで御案内しますので、早速行きましょう。」案内役も買って出てくれた佐天と初春が先頭になり、3人は花屋へと向かった。 例えばこんな1月31日(記念日) 2 同日 とある花屋にて―――初春の案内で、3人は第7学区のとある花屋に来ていた。西洋の通りにいかにもありそうなモダンな外観で、赤を基調としたシックな色使いに好感が持てる。入り口の上辺りに落ち着いた山吹色で「Flore claire(フロール・クレール)」と書かれている。 恐らく、それがこの店の名前なのだろう。外には大きな鉢植えが置いてあり、入り口の横にはカラーウッディを利用しその日お勧めであろう花の名前と値段が書かれていた。外から少し見えるだけでも店内に色々な種類の花があるのが見える。案内してくれた初春と佐天も、店の雰囲気と取り扱っている花の種類の豊富さに思わず見とれているようだった。「こんなに種類あるのか… ま、とりあえずは片っ端から見てくかな。」そう呟き、早速上条は店内へと入って行った。 上条の呟きを聞いた初春がふとある事を思い出した。「花って確か、それぞれに花言葉があるからそこも気にした方が良いですよね?」「かもしれないねー。 あ、そうだ! 今回の趣旨に合いそうな花言葉を持ってる花、調べられないかな?」「ちょっと待って下さいねー。 花言葉、花言葉… っと。」初春は早速調べ出すが、一言で「花言葉」と言っても意外と目的・用途別に種類は多い。「今回の『感謝』とかを意味するのは、カンパニウラとかダリア、モルセラとかですかねー。 でも今挙げた花って、花束とかよりも一輪の方が合うかもです。 でも、花を一輪だけプレゼントというのも微妙ですよね。 きっと、店員さんなら簡単に作ってくれるとは思うんですけど、他の花と混ぜる感じになるんでしょうか…」と言って、初春は画面に表示された花を指しつつ悩む。花言葉も意識するとなると、意外と難しいな。 と改めて実感したが、佐天は上条が言った先程のセリフを思い出した。「ねえ初春… そういえばさっき、上条さんって『美琴が好きだ』って思いっきり言ってたよね? どうせなら、そういう方向の花言葉から選ぶのも良いんじゃない?」「…ですかねぇ。 それじゃ、そういう方向の花言葉は? っと…」話の意図を察したのか、初春は早速「そういう方向の意味」の花言葉を持つ花を探し直す。 その口元が何やらニヤけているのは気のせいだろうか。「見つけました! これとかこれ、こんな感じのお花はどうです?」「どれどれー?」佐天が画面を覗き込むと、そこにはいくつかの花が載っていた。 初春が指差した花を見ると、花の写真と共にそれぞれの花言葉も載っていた。「良いね、これ! この辺りなら、どれを選んだとしても後で面白いかも…」「ですです。 後で御坂さんをファミレスに呼んで、花を貰った際の話を聞けると楽しいかも! イヤ、絶対に聞き出しましょう!!」店先でニヤニヤする様子はハタから見ると結構怪しいのだが、2人は気にしていない。そんな事よりも、「さて、どうやって呼び出し、聞き出そう?」とその先の事まで考え出している位である。「このお店のHP上から確認すると、どれも『在庫有り』にはなってたんですけど… 一応、店員さんに確認してみますね。」「了解! それじゃ私は上条さんを誘導してみるね。」お互いに頷くと、初春は店員のもとへ。 佐天は上条のもとへとそれぞれ向かうのだった。(さて、っと… 上条さんはどこへ…?)広い店内とは言え、色々な花が飾られていて場所によっては反対側の通路も見えない。どこだろう? としばらく探した所で、通路の途中で何かを見つめて佇む上条を見つけた。「あ、居た居たー。 って、上条さん立ち止まってどうされたんです?」近くに寄ると、一つの花に注目しているのが分かった。 その周りを見ると、同じ花でも『紫』、『青』、『ピンク』、『白』、『黄色』と種類が豊富なようだ。「いや。 パーっと店内を見てきたんだけどさ、急にこれが目に留まったんだ。 んで、よくよく見てみると意外と綺麗だなと思ってな。」言われてみると、確かに綺麗だった。 ちょこん、と白い小さなものが目に留まる。 じっくり見つめてみるとそれが花であるというのが分かった。「自分の感覚だと綺麗だな、とは思えるんだけど… こういうのって、贈られるとどうかな?」「そんなに心配しなくて大丈夫です! 綺麗ですし、絶対喜んでくれると思いますよ!!」(うーん、これってさっき見た気がするような… この花って何だったっけ?)上手く思い出せずにモヤモヤとしたが、自信無さげに確認してきた上条に対して佐天は胸を張って答えた。「これなら、この花をメインにして綺麗な花束にしてもらえるかも。 早速店員さん探してきますね。」手の空いてそうな店員はいないだろうか?と辺りを見回すと、初春と女性の店員が揃ってこちらにやってくる所だった。やって来た初春に近寄り、小声でそっと耳打ちする。(上条さん、そこにある花が気に入ったみたい。 で、それに決めるかもって。 でも、そこにある花って、さっき見かけなかったっけ? 気のせいかな。)佐天がそれとなく示した花を見て、驚く。 どんな花を選ぶのか、と少し不安になっていたがどうやら杞憂だったようだ。(わー、鮮やかだし綺麗で素敵じゃないですか! 名前は……… うーん。 確かに、さっき見かけたような…)初春も気になるのか、花の名前で再度検索をし始める。ヒソヒソと小声で話し合う佐天と初春だったが、店員は初春からそれとなく話を聞かされていたらしく上条に声を掛けていた。「いらっしゃいませー。 本日はどのような花をお探しですか?」「あっ、ども。 実は、色々と見てたらこの花が何となく気になって… 質問なんですけど、この花で花束とかって作ってもらえますか?」と言って上条が指差した花を店員が確認する。 そういった注文には慣れているのか、すぐに答えが返って来た。「『その花だけで』っていうのもできますけど、その花なら他のを少し付け足せばもっと見栄えの良いのができますよ。 サイズはどうされますか?」サイズまでは考えて無かった。 どれくらいが良いんだろう?と考え込んでしまう。しかし客が悩むのにも慣れているのか、店員がさり気無く話を導いてくれた。「『花束にしたい』って事は、どなたかにプレゼントされるんですよね? そうすると、サイズは手渡せる位で良いかもしれませんね。」「えっ? ええ、まあ…」この店員さんなら、目的をちゃんと話した方がより良くしてくれそうだ。 だが、「彼女に贈ろうかと」と伝えようとして恥ずかしくなってしまう自分が居る。土御門や青ピ、佐天や初春などの知り合いに言うのは慣れてきた上条だったが、見知らぬ人に言うのはまだ戸惑いがあった。どうしよう?と悩んでいると、少し離れた所で歓声が上がる。 歓声の主は佐天と初春であった。(か、上条さん素敵です! 直感でこの花を選ぶなんて!!)(だよねだよね! さっき初春が調べていくつか見せてくれた中でも、まさか「これ」を選ぶなんてね。)2人を見ると、小声で相談しているようだったが何だか盛り上がっていた。 上条と店員の視線に気が付いたのか、こちらに慌てて近付いてくる。「上条さん。 ダメですよ、恥ずかしがらずに目的をちゃんと伝えないと。」こちらの話はちゃんと聞いていたらしい。 いきなり初春にダメ出しをされてしまう。「えっと… 実は、彼女に自分の気持ちを伝えるのにプレゼントしたくて。」感謝の気持ち、とまではまだ言えなかった。 だが、上条がそう伝えると、「ふふっ。 その彼女さん、羨ましいですね。」と、店員は微笑みながら言う。 続けて、「実はこのお花…」とその花が持つ意味を教えてくれ、「この花で良いか?」と確認された。花が持つその意味に一瞬固まるが、既にこの花が気に入ってしまっている。 今更他を探しても見つかる気がしなかった。(ま、美琴といえど全部の花言葉を知ってるとは限らないからな。 …見た感じで喜んでくれるだろ。)自分にそう言い聞かせ、選んだ花をメインにして花束を作ってもらう事にした。GOサインが出ると、店員は必要になるであろう量と他に添える花なども選び奥のレジへと移動する。てきぱきと花束を作る作業をしつつ、店員は再び上条に質問してきた。「花束でしたら、ラッピングなどいかがでしょう? ラッピングは通常タイプのアメリカンと、少し上品な感じのヨーロピアンの2種類ございます。 通常タイプのアメリカンだと無料で。 ヨーロピアンですと、すみませんがお花代の他にプラス500円となっております。 どちらになさいますか?」どの程度を以って通常と言うのだろう?と疑問に思ったが、通常よりは上品な方が良いかもしれない。「と、とりあえずヨーロピアンでお願いします。」「それと、プレゼントでしたらメッセージカードなども一緒にいかがでしょう? こちらもプラス500円となっておりますが…」「一応、それもお願いします。」「メッセージカードを書くのであれば、こちらでどうぞ。 少しですけど、色々なペンも有りますのでお使い下さい。」空けてくれたレジの端を使い、早速カードにメッセージを書き込んでみる。書き始めこそ少し迷ったものの、自分は気持ちを伝えられると信じて簡単なメッセージで済ませる事にした。ありがとうございました、とメッセージカードを渡すと店員が受け取り花束に添えてくれる。流石、と言うべきだろう。 上条がカードに書き込み終わった時点で既に花束は完成している。出来栄えは?というと、頼んだ自身でさえも少し驚く程の良い出来であった。この花束を崩さずに持って帰るには?と考え、気になった事を聞いてみる事にする。「あっ、そうだ! 花束を直接持って帰るのが恥ずかしいんで今日届けてもらうように配送とかってお願い出来ませんか? 家は第7学区のとある学生寮なんですけど。」「配送ですか… うーん。 配送だと、前日の14時までにご注文頂かないとお届け出来ないんですよー。 あっ、そうだ。 少々お待ち下さい。」一旦断られはしたものの、何かを思い出したらしい店員が他の店員を探してレジを離れた。配送が断られた、という事は自分で持って帰らないといけない。とりあえず持って帰る途中で誰かに出会わない事を祈りつつ、覚悟を決める。 だが、上条が覚悟を決めた辺りで先程の店員が戻ってきた。「確認しました所、これから第22学区の方にお花を配送しに行く用事がありますね。 その際にご一緒でよければお届けできますよ。」と嬉しい提案をしてきた。 話を更に聞くと、それは夕方頃になるらしい。 時間帯的にも丁度良いかもしれない。「届けてもらえるなら、それでお願いします。 送料はいくらになります?」「お代は結構ですよ。 『ついで』で行ける範囲でもありますから。 それでは、配送先のご住所をお聞きしてもよろしいでしょうか?」渡された紙に、配送先として自分の学生寮の住所を記入する。「それじゃあ、配送宜しくお願いします。」「ありがとうございました。 それと、有料のラッピングとメッセージカードをセットでお選び頂いたので『お花の情報カード』もつけておきますね。」「何から何まですみません、ありがとうございます。」話がまとまった所で会計を済ませる。 会計が終わった所で改めて店員に礼を伝え、上条達は店を出る事にした。 「せっかく案内して来てもらったのに、最後は自分で決めちまってごめんな。」店から出てしばらく歩いた所で上条が謝ってきた。「問題ないですよー。 やっぱり、『上条さん自身が選ぶ』というのが大事だと思います! それに、案内だけでもお役に立てて良かったですし。」大丈夫、気にしないで下さい。 という初春と、その横で佐天が頷いている。「それじゃあ私達はこっちの道なんで、この辺りで!」と言って佐天と初春は上条と別れた。 段々と遠くなる上条を見送り、姿が見えなくなった辺りで横に居る初春が話しかけてきた。「久しぶりに上条さんの本領発揮を見ましたけど、やっぱり凄いですねー。」「だね。 まさか、パッと見であの花を選ぶとは思わなかったよ。 もし、あんな事を自分がされたら、雰囲気によってはイチコロかも…」そこまで言った所で佐天が溜め息をついた。「あーぁ… 私も御坂さんみたいに素敵な彼氏見つけられるかなー?」「見つけられますよ、きっと! お互いに頑張りましょう!!」「そうだよね! 頑張るかー!!」完全下校時刻も近くなった道の片隅で、2人の少女は何やら決意を固めるのであった。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 同日夜 とある学生寮―――佐天と初春の2人と別れた後、上条はまっすぐ学生寮へと帰って来ていた。メールで「夕飯作って待ってる」と言っていたのを思い出したからだ。 余り待たせるのも悪い気がする。玄関のカギを開けドアを開けて中に入ると、制服にエプロン姿の美琴が玄関で出迎えてくれた。「おかえりー。 思ってたより遅くなくて安心したわ。」「夕飯作って待ってる、って話だったからな。 出来るだけ待たせたくなかったんだよ。」そう言いつつ中へ入ると、一段と良い香りが漂ってきた。 良い香り自体は廊下を歩いて来た時からしていたが、どうやら自分の家だったようだ。台所を見ると鍋が見えた。 鍋と香りから判断すると…「おぉ! 今日はビーフシチューか? 珍しいな、平日に作ってくれるなんて。」「今日は寒かったからねー。 久しぶりに腕によりをかけて作ったわよー。」と美琴は可愛らしいガッツポーズをしながら答えてきた。「もう出来てるから、そろそろ夕飯にしない? 洗面所で手洗いとうがいしてきてよね。」「おーう、分かった。 ちょっと待ってろ。」返事をしたあと一度リビングへと移動し鞄を置く。 そして洗面所へと向かう。上条は洗面所で手洗いとうがいをしながら、どうやって話を切り出そうかシュミレーションをしてみた。改めてシュミレーションをしてみると意外と難しそうだ。 柄にも無い事を言う(であろう)自分に恥ずかしくもなる。(今更ながら凄く恥ずかしいぞ、これは。 だが、もう花束も頼んじまったしなぁ…。)仕方無い! 決めたからにはやってやる!! と決意し、リビングへと戻った。リビングへと戻ると、既にビーフシチューが盛り付けされていた。 他にサラダもある。 後は上条が席に着いて食べるだけだ。美琴の正面に座ると、「当麻を待ちくたびれてお腹ペコペコよー。」と頬を軽く膨らませて抗議してきた。「悪い。 ちょっと用事があってな。 それじゃ食べようか。」2人で「いただきます。」と声を合わせ挨拶し、食べ始める。上条はどう切り出そうか未だに迷っていた。 話をそれらしい方向へと持っていこうかと考えたが、上手いきっかけも思いつかない。花が届けば、とも思ったがまだインターホンが鳴る気配は無かった。あれこれと考えている内に、そわそわとしている様子が美琴にも伝わってしまったらしい。「どうしたの? さっきから落ち着かないみたいだけど…」「えっ!? そうか? か、上条さんは落ち着いてますの事よー?」「思いっきりウソでしょ、それ。 …またどっか外へ行くとか、何か隠し事とかしてるんじゃないでしょうね?」信じられない、とばかりに疑いの目で見てきた。 やはり、美琴には敵わないかもしれない。(花束はまだ届いてないが、もう言うしかないか。)そう決意して、話を切り出す事にした。「…あー。 実は美琴に話さないといけない事があってだな…」「何よ? まさか本当にまた外に行くとか言うんじゃないでしょうね?」美琴は自分で言った事を疑いから確信に変えようとしていた。 歯切れの悪い上条の話し方では無理も無いのかもしれない。「いや、それは違うんだけどな…」「じゃ、何よ?」先程までの空気は一転、険悪なムードになりかける。 が、そこでインターホンが鳴った。助かった、と思い急いで玄関へと向かう。 時間的に、頼んでおいた花だろうと予想し印鑑も用意した。「どちら様ですか?」「フロール・クレールです。 お届けものに参りました。」玄関のロックを外しドアを開ける。 と、そこには先程店で対応してくれた店員が立っていた。「それではこちらに受け取りのサイン、または印鑑をお願いします。」言われるままに、指差された場所に印鑑を押した。「それではこちらが控えになります。 ありがとうございました。 それでは頑張って下さいね!」花束が入ったダンボール箱を上条に渡すと、店員は去って行った。 何か最後に一言、余計な事を言われた気がするが気にしない事にした。玄関先でのやり取りが中にも聞こえていたのだろう。 ダンボール箱を持ってリビングへと戻ると、美琴がジトっとした目でこちらを見ている。その目はいかにも「何を頑張るのよ?」と言いたげだ。だが、それを無視する形で予定していた事を実行に移す。 品物(プレゼント)は届いたのだ。 あとは言うだけである。覚悟を決め、美琴に届いた品物を開けるように促した。「とりあえず、そんな目で見るな美琴。 お前に何か届いたみたいだぞ?」わざとらしい振りに、ダンボール箱を渡された美琴は相変わらず何か言いたげだった。「何か、も何も贈り主がアンタになってるじゃない。」「いいから、開けてみろって。」上条に促され、とりあえずダンボールを開けてみる事にした。ダンボールを開けると… 中には花束が入っている。「綺麗…」ピンクを基調としたその花束に、美琴は思わず見とれてしまう。花束の色使いや花自体の綺麗さに見とれていたが、しばらくしてカードが2枚挟まっている事に気が付いた。1枚目のカードを手に取る。 そのカードは『お花の情報カード』とタイトル付けされていた。中を見ると、そこには「お花の楽しみ方」として延命方法などの色々な情報がプリントされている。そして最後に、花の名前と花言葉が手書きで記入されていた。 恐らく、客が買った花毎に店員が書き分けるのだろう。そこにはこう書かれている。 花の名前(色) : スターチス(ピンク) 花言葉 : 永遠に変わらない心一瞬、それを見た美琴の動きが止まりそうになる。 だが、2枚目のカードが気になり何とかそれを手に取る。2枚目のカード、それはグリーティングカードであった。カードには短い文章ではあるが、見慣れた上条の筆跡でこう書かれていた。―――いつも迷惑ばかりかけている美琴へ。 日頃の感謝と自分の想いを込めて。 From 当麻2枚目のカードのメッセージを読んだであろう美琴の動きが止まった。恐らく数分程経ったであろうか。 未だに美琴は動かないでいる。きっと言うなら今だ!と決意し、上条は美琴を後ろから抱きしめた。 すると、美琴からこちらに向き直して抱きついてくる。……美琴は泣いていた。その姿に焦り、上条は咄嗟に謝ってしまう。「ごめん、美琴。 やっぱり、俺がこんな柄にも無い事すると変だよな。 でも、外へ行くとかそんな事は無いから。」上条の確認に、美琴は無言で首を左右に振り「違う」と答える。「何て言ったら言いか上手くまとめられないけど… 入院とか課題とか、いつも色んな事で迷惑ばかりかけてるからさ。」そこまで言った上条は、これまでの日頃の感謝の気持ちなどを出来る限りの言葉で伝えた。きっとそれは、何を言っているのか上手くまとまっておらず意味不明な部分もあったかもしれない。でもきっと自分の気持ちは伝わってくれただろう。そう思えた所で「いままで色々と迷惑かけてごめんな。 そして、俺を選んでくれてありがとう。 俺も美琴の事、愛してるよ。」と改めて美琴に想いを伝えた。先程、感謝の気持ちを伝えた辺りでようやく落ち着き始めていた美琴だったが、再び泣き出してしまう。「うぇぇ… わだじもとうmのことぃあいじtるって…」何か言ってくれたようだったが、泣きすぎて解読不能にまでなっている。上条は優しく抱きしめ直し、泣き止むまで美琴を宥めていた。小一時間程経ったであろうか、やっと美琴は落ち着きを取り戻した。すると、ポツポツと美琴も自分の気持ちを語り出す。「ずっと私だけ空回りしてたのかと思ってた。 いつも当麻は『好きだぞー』ってテンプレみたいな返事しかしてくれないし。 当麻は私に彼女になるのをOKしてくれたけど、それは私を気遣ってくれたからなのかな?って。 ひょっとしたら私の気持ちだけ一方通行で… でも、他に好きな人が居ても良いから当麻と一緒に居たいな、って。 でもさっき、当麻の気持ちを言葉にしてくれて、形にもしてくれて… 『嬉しい』って思ったら涙が止まらなくなっちゃって。」それは、美琴が如何に上条を好きだという事、そして不安だったかという事でもあった。聞いた上条は嬉しさを感じると共に、反省もした。 自分の考えでここまで不安にさせていたのか、と。「美琴は一度決めたら突っ走りかねないから、せめて美琴が高校に入るまでは『愛してる』とかは言うのは待とうと思ってたんだ。 けど、俺の考えが逆に美琴をそんなに不安にさせてたなんて思わなかった。 それが今の内に分かっただけでも、許してくれないか?」「もう良いの… あなたの気持ちはちゃんと伝わったから。」そこまで言うと、自分も気持ちを伝えた事で完全に落ち着いたのだろう。美琴は姿勢を正して上条の方を向き「私はきっと、当麻のお嫁さん(パートナー)になる為だけに生まれて来たと思う。 もし他に選択肢があったとしてもそんな選択肢はいらない。 私も、当麻の事を愛してます。」と言って、ぺこりと頭を下げて来た。 そんな姿が可愛くて、美琴を強く抱き寄せる。上条は目をみながら「俺こそ、今一つ頼りにならない奴かもしれないけど、改めてよろしくな。」そう言って美琴の頬を両手で包み、唇を重ねる。まだまだ寒い1月の学園都市。 だが、とある学生寮の一室にはそんな寒さに決して負けない暖かいカップルの姿があった。
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上琴の奇妙な体験 3 再び時間は戻る。 美琴と上条が5年後上条を追いかけ始めてから、約10分後。 2人は今、5年後上条が住んでいるマンションの一室の前に立っていた。「ここが5年後の俺が住んでる部屋か…………御坂、もう大丈夫か?」「う、うん、大丈夫よ」 そう言った後に、美琴は大きく深呼吸を繰り返す。 何度も何度も、深い深呼吸だ。 しかし、自分の中では爆音で音楽を聴いているように心音が鳴り響き、感じている緊張は過去最大級。 とてもじゃないが平常心に戻るなんてムリな話だ。(とうとう来ちゃった…………どうかな……5年後の私……ほんとに付き合えてるかな……) と、こんな感じで緊張しまくっていたため、道中5年後上条に声をかけられないまま、部屋の前まできてしまったのだ。 もちろん上条も5年後の自分に声をかけようと何度か試みたのだが、その度に美琴がビビって上条を引き止めてしまったため結果は同じだった。 上条が『もう大丈夫か?』と言ったのはこのためである。 気持ちを落ち着かせるため深呼吸を続けていた美琴は、一度目の前のドアを見つめる。 この先に今回の事件の全てのカギを握っている5年後上条がいるのだが、美琴には一つ気がかりなことがあった。(…………想像してたより小さいわね、このマンション……さすがに一緒には暮らしてない……?) このマンション、外から見た感じ多分1LDKだ。 自分の妄想ではもっと豪華で華やかなマンションに住んでいる予定だったため、やや不安に気持ちが傾く。(…………ま、まああれよ、きっと親が許してくれなかったとかそんな理由のはず……うん) 勝手に納得した美琴は勝手にうなずき、生まれた不安をかき消そうとし、改めてドアを見つめる。 ここに入れば全てがわかる。 5年前に帰る方法も、今の自分の近況も、だ。 これが最後、そう決めて美琴はもう一度大きく一つ深呼吸をした。「…………ごめん、おまたせ。 もうほんとに大丈夫」「よし、じゃあ…………インターホン押すぞ?」「………………うん」 美琴は覚悟を決めた。 この扉の先にどのような運命が待ち受けていようと、全て受け入れると。(大丈夫……大丈夫? きっとコイツとは仲良くやってるはず……よね?) 美琴は祈る思いで、ドアを見続ける。 そして上条がインターホンを押そうと腕を伸ばした時だった。「「ッ!?」」 ガチャリ、という音がしたかと思うと、突然目の前のドアが開いた。 それはとてもゆっくり、普通に開ける何倍もの時間をかけて、そのドアは開ききった。 だが美琴も上条も一切ドアには触れていない。 上条はインターホンを押そうとしていたし、美琴はその後ろで祈っていたのだから、触れることは不可能だ。 ということは、もうわかりきったことだが、中にいる人物がドアを開けたということ。「…………」 そう、5年後上条だ。 先ほど外で見かけた時と同じ格好のままの彼は、不思議な物を見ているような様子でこちらを見ている。 5年後上条とのあまりに突然過ぎる出合いに、美琴も上条も思わずたじろぐ。(な、なんで突然…………まだ心の準備ができてないわよ……こっちのタイミングに合わせてでてきなさいよ!!) さっきの覚悟はどこへいってしまったのか、美琴は視線を落とし、心の中で5年後上条に理不尽ないいがかりをつける。 とは言えついに会えた、会ってしまった、これでもう後戻りはできない。 だがしかし、聞きたい事がたくさんあるはずなのに、言葉が出てこない。 帰る方法や、なぜここに来る事になったのか、そして自分の近況も。 なのに極度の緊張のためか、体が、口が、全く動かない。 そして訪れる沈黙。 突然のことで、美琴も上条は何も言葉を発せなかったのだが、5年後上条はにっこりと笑って「――ようこそいらっしゃいませ、5年前のお二人さん」 慣れた様子でそう言った。 まるでお店で店員に迎えられるような対応。 そんな5年後上条を見て、ちょっぴりときめいてしまったのは内緒だ。 そんな感じで美琴が惚けているうちに、上条がようやく口を開き、一つ目の質問をぶつける。「え、あ、えーと……お、俺、だよな?」「当たり前だろ? 正真正銘、どこからどうみても俺はお前、『上条当麻』だ」「あ、ああ……ですよね……」 上条の当たり前すぎる質問に答える五年後上条。 と、同時に彼は上条をジロジロと、頭の先からつま先までまんべんなく見回していく。 「いやー、それにしても5年前の俺ってこんな感じだったっけ? もうちょっと大人っぽくなかった?」「何言ってんのよ、そんなもんでしょ?」 その声は突然聞こえてきた。 美琴は一体どこから、と思ったが答えはすぐにわかった。 5年後上条の背後からだ。 今まで彼にばかり注目していたため気がつかなかったが、誰かいる。 5年後上条で隠れ姿は見えないのだが、美琴はその声に聞き覚えがあった。(い、今の声は…………まさか……) 美琴の鼓動が一瞬のうちに加速する。 血液が体中を駆け巡り、大気中の酸素を欲し始める。 だが、美琴は呼吸をすることさえ忘れる勢いで、今の声を脳内で繰り返し再生し、間違いがないかを確かめる。 そうしている間にもその声の主は、部屋の奥から上条の後ろへと歩み寄ってくる。 肩くらいまである茶髪でエプロンをしたその姿は、今までにずっと見てきた姿。 そう、それは――「わ、私…………?」 美琴は自信無さげに尋ねかけた。 5年後上条の後ろにいたのは、19歳になったと思われる自分、つまりは御坂美琴。 外見は上条以上に変化が見られ、特に自分には無いものが胸にはあった。 だが、そんなナイスバストを気にしている場合ではない。 何度も何度も彼女の顔を見直すのだが、間違いなく自分だ。(ほ、ほ、ほんとに私……? …………ってことは、私がいるってことは! コイツと付き合ってる……ってこと……?) 胸がじんわりと温かくなった。 信じられないようなことだが、これは夢ではない。 紛れも無い5年後の現実なのだ。――ヤバい、超嬉しい もう顔のにやにやが治まってくれない。 そして上条も突然の5年後美琴の登場に驚いたようで、目を白黒させていた。「え……マ、マジで御坂か!? ……なんか5年でだいぶ変わってるな…………」 彼の視線が5年後の自分の胸にいっているような気がするのは気のせいだろうか。 いや多分気のせいじゃない。 今は最高潮にテンションが上がっているためいいが、普段なら即電撃ものだ。 だが、そのテンションを下げるような言葉が、5年後美琴から飛び出した。「ちょっとちょっと、私御坂じゃないわよ?」「「え?」」 美琴は思わず固まった。 急激に血の気が引いた気がする。 『御坂じゃない』 その言葉はそれほどの威力を持っていた。 “御坂じゃない”ということはつまり、美琴でも、『妹達』でもないということ。 自分に姉妹がいるなんて話は生まれて14年間一度も聞いた事がないので、その線は無い。 にもかかわらず、今5年後上条の後ろには、自分を5歳ほど成長させた女性が確かに立っている。 もはやわけがわかない。 この女性は自分ではないのか、違うのならば一体誰なのか、もしかしてクローンの計画が再開されたのか。 混乱する美琴だったが、彼女を見ていたその時あるものが目に入った。「……ん? …………え……そ、それは……」 『それ』を見た瞬間、頭が真っ白になった。 『それ』は『そこ』にあるはずがない物、というか『そこ』に『それ』があってはヤバい、いやヤバくはないが異常だ。 上条はまだ気づいていないようだが、美琴はもう『それ』に釘付けになっていた。(…………ちょっと待って、ちょっと待ってよ……そんなことあるわけ…………あるわけ……………でも、もしありえたとしたら……) “ありえない、なんてことはありえない” 有名なホムンクルスが言った言葉であるが、それが今の状況にぴったりだ。 この目の前ある光景全てから、美琴は改めて推測する。 『5年後上条と一緒にいる』、『御坂じゃない』、『とある物』、これらより導き出される答えはただ一つ。 全く持って信じられないが、それしか思いつかない美琴はおそるおそる自分の答えを口にする。「御坂じゃないってことは………………上条……?」 この意味がわかるだろうか。 わかる人にはわかるだろうが、上条は全く理解できていないようで、『…………いやいや御坂、お前は一体何言ってんだ? 上条さんは意味がわかりませんことよ』と言いたいような顔でこちらを見ていた。 そりゃいきなり『御坂じゃなくて上条』なんて言えば10人が10人そんな感じの反応を見せるだろうし、言った本人の美琴だってまだ自分の言った答えを信じれていない。 戸惑う美琴と上条、そんな2人に5年後美琴が歩み寄ってきたかと思うと5年後上条の隣で足を止め、サラリと正解を言った。 「そうよ」「え?」「だからその通り、私は『御坂』じゃなくて『上条』よ」「え」 美琴に続き上条も固まった。 5年後美琴のほうを向いて、そのままピクリとも動かない。 美琴は5年後の自分の左手薬指付近を指差した。「じゃ、じゃ、じゃあ、『それ』、っていうか、その指輪は……本物?」 てその指輪を指す指、というか腕全体が震える。 指輪を指摘された5年後美琴はというと、嬉しそうに左手を顔の前へと挙げる。「ああこれ? もちろん本物の結婚指輪よ、いいでしょ」「結婚……指輪…………?」「ああ、俺たち今年の春に結婚したんだよ。 いや、まだ数ヶ月しか経ってないのに『御坂』って響き懐かしいな」「2人共もうわかったでしょ? 私の名前は『上条美琴』で、私たちは夫婦ってことよ♪」「…………ふ、ふ、ふ……夫婦…………?」 これ以上の情報処理はもう不可能。 『夫婦』というワードを聞いた美琴の脳はオーバーヒートを起こし、それはとてもとても幸せそうに気絶してしまったのは、言わずともわかるだろう―― その部屋は美琴が予想した通り、1LDKの造りだった。 ドアを開けて入るとまず廊下があり、右側にトイレと洗面所(浴室)が、左側には寝室に使っているという5.5畳の洋室へと繋がる扉がある。 そして廊下を抜けると、そこにはベランダ付きで約14畳のLDKが広がっていた。 座り心地のよさそうな2人用のソファ、その正面には40インチほどの大きなテレビ、食事に使っているのであろうテーブルとその側にイスが4つ、その他家具も充実していて、そこそこ良い暮らしをしているようだ。 美琴はこれを『小さい部屋』と思ったようだが、上条からしてみればこの暮らしは十分過ぎる。 そしてその室内にいるのは、4人の男女。 世界を救ったヒーローが2人と、最強の電撃娘が2人(1人はソファにて気絶中)だ。 5年後の自分たちがキッチンで何かしている間、ヒーローの片方は、イスに座り頭を抱えていた。(マ、マジで……俺5年後には御坂と結婚してんのか…………) 上条にとって、これは予想外中の予想外だった。 ぶっちゃけた話、5年後に彼女ができてる自信はあった。 美琴にふざけて『彼女できてるんじゃね?』とか言った後、街中で5年という月日がどれだけ変化をもたらすかを見て、5年あれば自分にも出会いくらいあると思っていた。 ところが、だ。 蓋を開けてみれば、彼女を飛び越して『妻』となっていたのはとても身近にいた人物。 そんなことなど。今の上条と美琴の関係からして考えられないようなことなのだから、そりゃビビる。 だが問題はそこじゃない。 いや、もちろん『美琴が将来の嫁』ということも大問題だが、今はそれ以上の問題がある。(……御坂すっげーショック受けてたよな……『妻』って聞いて気絶するし…………) 心の傷とか負ったらどうしよ、などと上条は呟く。 つまり、彼女の心情のほうが上条にとっては問題だった。 現在美琴は絶賛気絶中。 部屋に置いてあるソファーの上で気持ち良さそうに眠っているが、すぐに起きて現状を認識するだろう。 その時彼女が受けるさらなるショックは計り知れないのではないだろうか、と上条は考えた。 もちろんその考えは大はずれだが。 そんなこんなで、美琴へどうやって対応しようか悩む上条だったが、幸いまだ時間はある。 彼女が起きてくるまでに、なんとか 『できるだけ長く眠っていてほしい』と願う上条だったが、その願いは叶わなかった。「ん?」 足音が聞こえたのでふと顔を上げると、キッチンにいた5年後美琴がソファの美琴の元へ歩み寄って行った。 かと思うと、気絶している彼女肩を掴み、思い切り前後に揺さぶり始めた。「ほらいつまで気絶してんのよ! いい加減起きなさい!!」「ちょ!!」 上条が止めようとする間もなかった。 ガクガクと激しく揺さぶられた美琴は、当然目を覚ます。 「ふぁ……はれ……?」 5年後美琴がぱっと手を離すと、美琴は頭をくらくらさせたまま右手でごしごしと目をこする。 起きた、起きてしまった。せっかく時間があると思っていたのに。 上条が唖然としながらその状況を見ていると、美琴はは上半身を起こした。 そんな5年前の自分の姿を見た5年後美琴は『よし』と呟いた後、上条に対して、 「ごめんね~私のせいで時間取っちゃって。 じゃ、もうちょっと待っててね」 そう言ってバッチリウインクを決めた5年後美琴はキッチンへ行ってしまった。 『私のせいで』というのは、5年前の、つまり14歳美琴を意味しているのだろうが、上条としてももっと時間がほしかったため、『なぜ起こす』という気持ちが強い。 ともあれ、リビングに残された上条は、(キッチンに5年後の自分たちの姿が見えてはいるが)寝起き美琴と2人きり。 まだ美琴への対応策はまとまっていないが、とりあえず声をかけてみる。「あ、あの……御坂…………だ、大丈夫か?」「んー……?? ここは…………あ……そうだ……未来、だっけ」 美琴は完全に覚醒したらしい。 むくりと上半身を起こした彼女と、ばっちり目が合った。(…………もう、電撃食らう覚悟を決めるしかないか……) 上条は小さな声で『不幸だー』と呟いた。 しかし、この後の展開はまったまた予想外。 きょろきょろと室内を見回し、キッチンに5年後の2人の後ろ姿を目にした美琴は「わ、私たち、結婚したみたいね…………えへへ……」「……あれ? 怒ってないの……か? 『なんでアンタが私と結婚してんのよー』みたいなこと言ってくるかと思ってたんだけど……」「え、いや、あの…………別に……ね、そんなことは……」 美琴は頬を紅く染め、上条から目をそらした。 そのちょっぴり可愛い反応に、上条は困惑する。(え? 何この反応。 予想と違うんですけど…………御坂は俺と結婚することが嫌じゃないのか? なんかむしろ喜んでるような気がするのは…………気のせいに決まってるよな) 誰か彼に常識というものを教えてやってほしい。 普通なら、その態度を見れば美琴の気持ちくらいすぐわかるものだが、さすが鈍感王子といったところだいろうか。 で、予想では即電撃だと思い、未だに右手を美琴の方向へ身構えたままの上条の前にコーヒーが置かれた。「おまたせ、コーヒー入ったぞ。 熱いから気をつけろよな」「お、おう……ありがとな…………」「ほら、“私”も早くこっち来なさいよ。 私たちに聞きたい事あるんでしょ?」「あ、うん……」 5年後美琴の呼びかけに美琴はソファから降り、上条が座っている隣のイスへと座った。 の、だが、なぜか距離ができる限り距離を取ろうとしているようで、机の一番端まで移動して行った。 それを見た上条は考える。(?? 怒ってはないみたいだけど…………ひょっとして避けられてる? やっぱりイヤだった、っていうか嫌われた……? それはさすがにキツいな…………) 『御坂に嫌われた』という間違った考えに、ちょっとショックを受ける上条だった。 その一方、5年後上条と5年後美琴の間は『0』。 美琴が上条の左腕に抱きつく形で、ぴったりくっついている。 どうやら5年後の2人はこれが『当然』のことのようで、5年後上条は5年後美琴の頭を優しくなでながら、「で、5年前の俺。 まず何から聞きたい?」「あ、ああ、えーとな……」 5年後の2人には、聞きたい事はもちろん山ほどある。 多過ぎて困るレベルだ。 目の前の2人のラブラブっぷりについても聞いてみたかったが、とりあえずは根本的なことを選び上条は質問する。「じゃあまずここは5年後……ていうか俺が21歳の時代でいいんだよな?」「ああ、その通りだ。俺は21歳、美琴は19歳ってことだな」「だよな……なのに結婚してんのか……? その年齢だとまだ結婚しないで付き合ってるのだ一般的だと思うんだけど」「一般的にはな。 でも俺は美琴が高校を卒業すると同時にプロポーズしたからさ」 すると5年後美琴は、後ろの棚の上に置かれていた2つの写真立てを手に取り、上条と美琴へ差し出した。 「ほら、これが結婚式の写真よ。 よく取れてるでしょ?」 そこに映っていたのは、タキシードを着た上条の姿と、ウエディングドレスを身にまとった美琴の姿だった。 上条が美琴をお姫様だっこし、2人は満面の笑みを見せている。 そしてもう1枚はというと、式場内で永々の愛を誓い合っている瞬間、つまりキスしている写真だった。 「す、すっげー幸せそうだな……」「もちろんよ! ほんとに幸せだったんだから。 ま、今でもその幸せは続いてるけどね」「そりゃ上条さんは美琴を一生幸せにするって誓ったからな」 えへへ、と笑う5年後の2人。 実に微笑ましい。 そんな2人と、結婚式の写真を見た美琴は小さく呟いた。「いいなぁ……」「へ? いいな? 御坂も結婚したいのか?」「ええ!? …………それは……まあ、したい、かな…………」「やっぱ女の子はそういうこと考えるんだなー。 でも大丈夫だって、将来的にはできるだろ。 世界には何億って人間がいるんだからさ…………って、御坂? なんか不機嫌になってない?」「なってないわよ……このバカ…………」 そういいながら、美琴は上条を睨みつける。 ほんのわずかながら電気が宙を漂っているのも目に見えるし、誰がどう見ても不機嫌になっている。 それを見た5年後上条は「いや5年前の俺。 世界には何億の人がいるとか言ってるけど、将来美琴と結婚するの俺だぞ?」「…………あ」 5年後の自分のツッコミに上条は『俺は馬鹿か』と思った。(そうじゃん…………目の前で俺結婚してるじゃん……ていうかこのままいくと俺も5年後には御坂と結婚することになるのか?) そう思い、ちらっと美琴に視線をやると、「け、結婚……私とコイツが…………5年後には……」 『結婚』という事実を再認識したのか、彼女はなんか様子がおかしかった。 顔は最早当然のように赤く、どこか上の空のようだ。 声を書けようかとしたのだが、その視線に気づかれたのか、ふいにこちらを見た美琴と目が合った瞬間に再び目をそらされた。(……やっぱ避けられてんのか) と、まだまだ勘違いを続ける上条は一つため息を吐いてから、話を本題へ戻す。「いやでもさ、21歳っていったらまだ大学生だろ? 働いてもないのに結婚なんてして大丈夫なのか?」「大学? 俺、大学へは行ってないぞ」「え……行ってないのか? まさか俺の事だから浪人中とか…………?」「いやいや浪人とかしてねーから。 高校卒業してから働いてるんだよ」「マジか!? 働いてんのか!? ……なら結婚してても……大丈夫なのか? 働いているのならば、自分の力で生活しているということ。 親や美琴に頼っていないということがわかり、少し安心した上条に5年後美琴は再び写真を手渡す。 「でね、今度はこれ見てくれない?」「これ……何だ?」 今度の写真に写っているのは、喫茶店のような建物の前でお揃いのエプロンをしている自分と美琴の姿だった。 当然のごとく2人とも満面の笑みだ。「喫茶『KAMIKOTO』……? ここで働いてんのか? それになんで御坂まで同じ格好して写ってんの?」「あ、ひょっとして私はここでアルバイトしてるとか? 」 上条と美琴が複数の質問を投げかけると、それに5年後美琴が答える。 だが、答えといっても、それは彼が望んだような答えではなかった。 「アルバイト? 何言ってるのよ」 ほんの少し顔を傾けた後、彼女は軽く微笑み「これは私たちのお店よ。 2人で一緒に喫茶店をやってるのよ、名前でわからなかった?」「「え」」 上条は自分の耳を疑った。 『私たちのお店』、『2人で一緒に喫茶店をやってる』という2つのとんでもワードが聞こえてきたきがするが、気のせいだろうか。 そして上条と美琴はもう一度手元の写真を見てみる。「……ま、まさか、この喫茶店の名前の『KAMIKOTO』って……」「私たちの名前から……?」「そうよ、上条当麻の『上』と上条美琴の『琴』をとったの。 ほんとは2人の名前からとって『MAKOTO』にしようかと思ったんだけど、当麻がこっちの方が語呂がいいっていうから」「さいですか……」 とても嬉しそうに話す5年後美琴と、それを笑顔で見ている5年後上条と、顔が引きつる上条。(5年後の俺たちってどんだけラブラブなんだよ……一緒に経営って…………ていうかこれはさすがに御坂も嫌なんじゃ――)「わぁ…………これが私たちのお店……」「ありゃ……?」 また上条の予想は外れた。 美琴は嫌がるどころか、目を輝かせて写真に見入っていた。 “食い入るように見る”とはこういうことを言うのだろう。 しかし、上条は彼女の目の輝きには気づかない。(これも嫌じゃないのか? ……ていうか喜んでる? いやまあ怒っていないならいいか) ほっとした上条は、机の上に置かれていたコーヒーカップを手に取り、一口飲んだ。 何気なく飲んだ一口であったが、上条はその味に驚愕する。 「…………このコーヒー美味くね? 5年後ってコーヒーまで進化してんの? 普通じゃない美味さなんだけど」「え、どれどれ…………わっ! ほんとに美味しいわね。 インスタントじゃないわよね?」「もちろんインスタントじゃないわよ。 このコーヒーは当麻が作ったんだから」「え……これを!? 冗談抜きですげー美味いんだけど……マジで俺が?」「大マジよ。 お店でもすっごい好評なんだから」「これを店で出してるのか…………これだけ美味けりゃ客も入るだろ」 それほどコーヒーは美味しかった。 今まで飲んできたコーヒーの中ではダントツだ。 上条と美琴の反応に、5年後上条は少し恥ずかしそうな様子を見せながら「高校出て2年間は武者修行してたからな、味にはそこそこ自信あるぜ。 だからお客さんは結構来てくれるけどなぁ……俺は心配なんだよ……」「心配? 何がだ?」 コーヒーの味は問題ない。 ということは飽きられること、とかなのか。 と、思いきや、5年後上条の答えはまたまた予想外の物だった。「男の客だよ!」「…………は?」「は? じゃねぇって!! だって美琴は超可愛いじゃん! 美琴目当てで来る客なんて山ほどいるんだぞ!? 上条さんは日々心配ですよ……客の野郎共が俺の美琴に手を出さないかってことが……」 冗談だろ? と、声に出そうかと思ったが、上条は止めておいた。 目の前で本気の様子で悩む彼に『冗談』などという言葉をかけることはできなかった。 そんなわけで眉間にしわを寄せリアルに心配する5年後上条に、5年後美琴が言った。「何言ってるのよ。 当麻目当ての女の子だっていっぱい来るじゃない。 私たちが夫婦だってことはお客さんも知ってるはずなのに、毎日メールアドレス交換してくださいって言われたり、何十通もラブレターもらったり、ストレートに好きですって言われたりしてるし…………そっちの方が心配よ」「…………確かに最近やたらモテる気がするけど、全部断ってるだろ? 上条さんは美琴しか愛さないから心配しなくてもだいじょーぶ」「……ほんとに? よくお店の中でも女の子に抱きつかれたりしてるじゃない……」「あ、あれは不可抗力だって!! 毎回言ってるだろ? この指輪に誓って、上条さんは浮気なんてしませんことよ?」 そう言った5年後上条は、5年後美琴の頭を優しくなでる。 フラグ体質で女子を引き寄せる上条、看板娘として男子を呼び込む美琴。 この2人が経営する喫茶『KAMIKOTO』が毎日長い行列を作るほどの超人気なのは、容易に想像できるだろう。 そして5年後上条は知らない。 女子中高生は“わざと”つまずいたりして、抱きついてきていることを。 そんで。 このままではいつまで経っても真相が知れそうもないので、上条がため息まじりに言う。「あのー……いちゃついてるとこ悪いんだけどさ、そろそろ5年前に帰る方法教えてくれないか? 時間も時間だし俺腹減ったんだよ」「お腹減った? じゃあご飯にしましょ♪」「え、いや帰る方法を……」「よーし、じゃあ俺も手伝うよ」「人の話聞けよ……上条さん泣くぞ……」 今の自分からでは考えられない2人の仲の良さに、若干、いや普通にうんざりする。 しかし、この後5年後の自分たちのラブラブっぷりを目の当たりにすることになる――
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とある2人の放課後喫茶店 ~日常編 「いらっしゃいませ~」 まだまだ残暑厳しい9月初旬、平日の午後。 ここは第7学区の表通りに面した瀟洒な喫茶店。 その窓際のいつもの席。「すまん、待たせたか?」 と遅れてきた少年、上条当麻。「少しね。だから今日はアンタの奢りってことでよろしく」 さも待ちくたびれたかのように、グラスのジュースをストローで飲む御坂美琴。 いつの頃からか、2人は時々こうしてこの店のこの席で待ち合わせるようになった。「げっ……マジで?」 そう言って一瞬固まった上条。 その顔をちらりと見て、にやりとする美琴。「マジで! それとも何? また罰ゲー……」「わかりましたっ! お願いだからそれ以上言わないで」 そう言って椅子にへたり込んだ上条は、近づいてきた店員に「アイスコーヒー」とだけ伝えると、そのままテーブルに突っ伏した。「何へばってるのよ」「また朝からいつもの不幸続きって言うか、トラブル続きでさ。今日はほんと、呑まず食わずなんだよ」「ふうん……」「で、今日は5時にタイムセールだから、それまでの時間つぶしだぞ」 ふうっとため息をついて、お腹をさすっている上条。 その姿を横目に、いつものように柔らかな笑みを浮かべる美琴。「でもアンタ、それでアイスコーヒーだけって、お腹空かないの?」「しゃあねえよ。貧乏な上条さんは一番安いメニューしか頼めませんのことよ? はぁ、腹減った……」 上条のその言葉に、少し逡巡していたような表情の美琴が、やがて意を決したように、おずおずと切り出した。「――ねえ。だったら今から晩御飯作ってあげよっか? ここの奢りのお礼ってことで」「え? でもお前、料理出来たの?」「あたりまえじゃない! 心配なら実際に食べてみなさいよ。――じゃこの後、食材買い出しに行くからね!」「っていうか、お前が料理するのって決定なのか?」「いいの! わ、私の料理の練習だと思って、付き合いなさいよ。あの子の分も含めて試食付き、食材費負担無しってことでオッケー?」「それでもなあ。なんか気が引けるっていうか……」「――ダメ?」「――ダメじゃないです……」 美琴から上目遣いに迫られて、上条はあっさり陥落する。 テーブルの下でグッとガッツポーズを決めた美琴だった。 「それじゃ、今日のセールの目玉を教えなさいよ」「えっ? お前、そっちも行ってくれるのか?」 本当に? と何かを期待するような表情の上条。 そんな彼の気持ちを見透かしたかのように、美琴はさも当然と言った顔をする。「当然じゃない。アンタもどうせ、今日のセールでメニューを考えるんでしょ?」「まあそうなんだけどさ。――今日は鶏もも肉おひとり様2パック限り150円と、キャベツ1個限り78円。それと卵1パックで68円だな」「2人で行けば余分に買えるわよね? メニューは……、卵と鶏肉なら親子丼といきたいところだけど、キャベツがあるから、鶏のから揚げでどうかしら?」「異存ございません。ていうか、お前、セールなんて初めてじゃないのか?」「だからそっちはアンタに任せるわよ。私はそれ以外の買い物をするから。揚げ油とか、から揚げ粉とかもいるでしょ? それにあの子のおやつだって」「――俺、今週、ホントに金、無いんだよ……」 ため息と共に、がっくり肩を落とす上条。 そんな彼を慰めるかのように、美琴が声をかけた。「気にしないで。今日の買い物代ぐらい私が出すわよ。追加したってそう変わらないんだし。それよりアンタは黙って食べてさえくれればいいのっ!」「でもやっぱりなぁ。ちょっと気が引けるというか……。でもまあ、お前がそこまで言うのならいいか」「なによ。私の料理じゃ不満なわけ?」「いや違うって。あーわかったからそんなにビリビリすんじゃねえ!」「ふんっ。なんならアンタの分、全部あの子にあげちゃってもいいんだけどぉ?」「お奉行さまーー! お慈悲ーー! はらぺこのままで寝るのはご勘弁ーー!」 そんな上条のリアクションに、くすっと笑う美琴。 彼女のいつもの笑顔に、つられた上条の顔にも笑顔が浮かぶ。「そんなに気が引けるんだったら、今度の休みの日にちょっと付き合ってよ」「ほほう。ミコっちゃんは上条さんにカラダで返せと?」「っ!? カッ、カカ、カラダでってアンタっ! ばっ、馬鹿なこと言ってんじゃないわよっ!! それにミコっちゃん言うな!!」 上条の言葉に、真っ赤になる美琴。 そんな彼女を見て、にやにやとする上条。「わははは。ま、ご飯のお礼に、どこへでもお供しますよ、わんわん!」「わんわん、じゃないわよ。アンタは桃太郎の家来かっての、まったく。――もう、人の気も知らないで……」「ん? なんか言ったか?」「言ってませーん。それはそうと、そろそろ行かないと間に合わなくなるわよ?」「んだな。じゃ、そろそろ行くとしますか」 わいわいと言いながら、肩を並べて店を出て行く上条と美琴。「ありがとうございましたー」 そこは2人の馴染みの喫茶店。